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2023/06/06 16:12:08
 

グリーンシートは、サプライチェーンやオープンマーケットに影響を与えるトレンドについて、Fusion Worldwideが毎月発表しているレポートです。最新の半導体、完成品、ハードウェア部品に関するレポートをご確認ください。 

6月のグリーンシートの注目ポイントをいくつかご紹介します。 

  • RenesasとNXPの車載用集積回路は品薄状態が続いています。 
  • TDK製PTCサーミスタセンサの需要が急増し、近い将来品薄に陥る可能性があります。 
  • Intelのチップセット価格が上昇した結果、顧客はコスト削減を求めるようになりました。
  • DDR5の需要増に後押しされ、メモリ市場は待望の回復に向かい始めました。
  • さらなる遅延が、すでに制約を受けている産業用および消費者向けファンの供給に影響を及ぼしています。 

全体的に、自動車業界では品不足が続いており、工業製品のリードタイムは52週間を超え、値上げは間近に迫っています。詳しくは、以下のレポート全文をご覧ください。  

 

 

 

集積回路 

車載用集積回路の需要の拡大とリードタイムの延長 

一般的なRenesasシリーズは、リードタイムが16~24週間という標準的な期間に戻ったことで、市況が安定してきています。しかし、車載用シリーズでは、需要によってリードタイムが長くなっています。イメージセンサ、MOSFET、トランジスタの不足が継続しています。 

Renesasは、自動車市場の活性化により、主要な市場であるR5#およびR7# MCUシリーズを優先的に受注しています。また、これらのシリーズも、R5F、ISL、PSシリーズと同様に、以前から品薄状態が続いています。Renesasのリードタイムは以下の通りです: 

  • PS- prefixed optocouplersは在庫切れで、リードタイムは不明です。 
  • スイッチレギュレータ、8ビット、32ビット MCUのリードタイムは約40週間まで短縮されました。 
  • M3026XXとM3062XXのリードタイムは52週間を超え、特定のマイクロコントローラの製造能力は依然として制約されています。 

NXPも車載用シリーズで同様の制約を受けています。MCIMxxシリーズのリードタイムは不安定であり、最長70週間に及びます。一方、車載用MCUシリーズであるFSxxxについては、最短でも52週間に及びます。また、品薄が深刻なS9xシリーズについても、価格が上昇しています。 

汎用アンプ2回路9-PDIPシリーズについては、マレーシアでの限定的な製造割り当てが制限の背景にあります。これは、表面電解めっき配線パターン(surface electroplated interconnection pattern:SEIP)の問題によるもので、電気的な誤動作や故障の原因となる可能性があります。幸い、同社は需要に見合った製造能力を確保しているため、供給の不均衡は短期間で収束すると思われます。しかし、これはすべての新規発注に影響を及ぼしており、顧客向けのリードタイムと納期が延長される可能性があります。 

 

TDKの高精度センサが注目を集める 

TDK株式会社は、車載用高精度センサの生産量を倍増し、十分な供給量を確保する計画を立てています。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的流行の中で、自動車業界は集積回路を始めとした電子部品の不足により特に大きな打撃を受けたため、自動車産業向けの割り当てを確保する取り組みは、車載用商品の顧客とTDKの双方にメリットがあります。この戦略がTDKとその顧客との戦略的パートナーシップを強化するとともに、高度な生産技術により、TDKが垂直統合型で製造を行う他製品の製造全般が改善されます。 

これらのセンサは、圧力、温度、湿度、位置などのさまざまなパラメータを正確かつ確実に測定することで、車載用アプリケーションにおいて重要な役割を果たします。自動車のテクノロジー高度化に伴い、高精度センサのニーズが高まっています。これらのセンサは、先進運転支援システム (advanced driver-assistance systems:ADAS) を実現させ、車両の安全性向上や全体的なパフォーマンスの向上に不可欠です。 

 

自動車市場と消費者市場が高度な温度検知用製品を求める 

自動車業界や消費者業界には温度監視用アプリケーションが多いため、PTCサーミスタの需要が高まっています。自動車業界ではエンジンの過熱を防ぐためにこれらのセンサを使用しますが、消費者業界では電子機器の安全性と寿命を確保するために、スマートフォンやウェアラブルにこれらのセンサを活用しています。  

PTCサーミスタセンサの需要は、さまざまな業界で温度センサ、温度管理、および保護に対するニーズが高まっているため、今後も増加し続けると思われます。 

 

 

 

CPU

コスト削減は今なおPC顧客の最優先事項 

Intelの第12世代Alder Lakeと第13世代Raptor LakeのデスクトップおよびモバイルCPUの売上が低迷しています。コスト削減は顧客との対話を促進するための重要な要素であり、オープンマーケットでは依然として主要トピックです。  

Intelは、最近の業績悪化を受け、収益を向上するためにOEMに対し特別価格を直接提示しています。しかし、正規代理店にはまだ同様の割引が適用されていません。 

AMDが講じてきた戦略は、Tier 1顧客には直接サポートを提供し、代理店が目標収益を維持するためにはTier 2顧客に依存するというものでした。結果として、Tier 2顧客へのフルフィルメントは、それが製造業者にとって二の次であることを考慮すれば、順調であると言えます。とりわけ、AMDモバイルCPUにおいては、Ryzen 6000シリーズとRyzen 7000シリーズが人気で、かなりの売上を記録してきました。 

また、AMDは、最近発売されたRyzen 7000モバイルAPUに続いてAI業界を戦略的にターゲットとし、需要増から利益を得ようとしています。AMDは、AI顧客をより重視し、より多くのリソースを投入しているため、最近発売された7040 Uシリーズプロセッサがどの程度の売上を記録するかは興味深いところです。 

 

過剰在庫問題がサーバ市場の低迷を招き保守的予測が立てられる 

Intelは、四半期収益報告の不調を受け、業績の見通しを改善するためにTier 1ユーザーに有利な価格を提示し、優先販売を行っています。価格調査は何度も行われたものの目立った販売実績はなく、売上はここ1ヶ月ほど減少しています。  

最新のIntel Sapphire RapidsサーバCPUに関する問い合わせが僅かであることは、以前行われたCascade LakeからCascade Lake Refreshへの移行期間に比べ、採用が遅れていることを示しています。正規代理店は、Sapphire Rapidsに関して保守的な予測を立てており、特別価格はなかなか承認されません。また、同シリーズでリベートが発生したというニュースもなく、需要の助けにはなりませんでした。 

AMDの第4世代Genoaシリーズも同様に、需要が低迷しています。そのためベンダーは、過剰在庫を避けるために慎重な見通しを維持しています。さらに、MilanとRomeの前2シリーズの在庫残が引き続き懸念されているため、価格は下落傾向にあります。 

しかし、購入者がCPUをIntelやAMDに求めるようになれば、AI業界がサーバ市場の回復に拍車をかける可能性があります。AIサービスを仕事の流れに取り入れる企業が増加すれば、AI需要増の可能性は高まってゆくはずです。 

 

チップセットの値上げにより需要は変化するか? 

Intelがサーバ用チップセットの価格を10%値上げしことは、最近のオープンマーケットの需要が上昇傾向にあることを考えれば、驚くに値しません。顧客は、値上げ前に供給を確保するため、5月中においては取引価格を求める傾向が強まりました。しかし、在庫が限られているため価格は高騰し、コスト削減のチャンスはほとんどありませんでした。 

とりわけ、C621のようなチップセットは、人気の高いCascade Lake RefreshやCascade Lake CPUとの互換性があるため、集中的に注文が増加しています。C621Aの部品は、第3世代Ice Lakeにも採用されているため問い合わせが急増しました。 

今回の値上げには、最新のSapphire Rapidsと互換性のあるサーバ用チップセット、C741も含まれました。残念ながら、このCPUの採用率は低く、顧客が前世代のIce Lakeからの移行を遅らせることで、さらに低下する可能性があります。コスト効率を求める声が、この移行を長引かせています。 

 

 

 

ハードウェア 

需要減と供給増によりSSDとHDDの減産を決定 

240GB~480GBといった低容量のSSDは、需要低迷により底値となっています。厳しい市場環境と利益率の低下により、製造業者は低容量のSSDやすべてのHDD製品の減産を余儀なくされています。Seagateはすでに減産に着手し、人員削減も行っています。  

現在、オープンマーケットでの供給は健全であり、製造業者の生産量が減少しても在庫を消化するまでにはしばらく時間がかかると思われます。  

サプライヤは、より大容量のエンタープライズ向けHDDが問い合わせや注文の唯一の明るい材料であることを認めています。しかし、供給は健全であり、減産がこれらの製品に与える影響はほとんどないと考えられます。さらに、2021年10月に販売終了(End of life: EOL)となったIntelのS4510シリーズについても、供給が減少しています。製造業者は、EOLとなったシリーズが完全に入手できなくなる前に供給を保証するために、今すぐS4520に移行するよう販売店およびエンドユーザに呼びかけています

 

メモリ製造業者が市場回復に伴う価格低下防止に注力 

レジスタード・メモリ(Registered DIMM:RDIMM)市場は、製造業者による減産を受け、この1ヶ月で活況を呈しています。この戦術により特定のハイランナーの受注が急増し、一時的に価格が高騰したものの、現在は当初の駆け込み需要から落ち着きを見せています。  

さらに、電源管理集積回路 (power management integrated circuits:PMIC) の問題がDDR5メモリモジュールの供給に影響を与え、価格が上昇傾向にあります。製造業者は早急に問題解決を図ったものの、Samsung製RDIMMについてはこの問題が長引いています。Samsungは、64GB 5600 DDR5のPMICの問題を解決することができました。余剰在庫の制約はほとんどが256GBに限定されていますが、全体の供給量はまだ通常のレベルに戻っていません。回復にはさらに2、3ヶ月かかる見込みです。  

市況の改善に伴い、製造業者は価格のさらなる下落や変動を防ぐために、供給と需要のバランスを取ることに注力しています。予測によると、DDR5の需要は2023年後半から2024年にかけて拡大し続けるため、各社はこれに対応するために製造投資をこの市場に集中させると思われます。 

PC用DIMMについては、ベンダーはここ数四半期における供給削減の結果を実感し始めています。オープンマーケット価格は、主に8GBと16GBのモジュールで少なくとも10%上昇しています。 

 

リードタイムの長さがゲーミングGPUよりもエンタープライズ向けGPUを優先させる結果に 

NVIDIA製RTX 4090の需要は健全にも関わらず、供給は制限されています。これは、主にGPUチップセットのサポートが不十分であり、製造業者がエンタープライズ向けGPUの生産を優先的に行っている可能性があるためです。この状況は、6月に発売される新型RTX 4060tiおよび4060ti 8GBモデルで悪化する可能性があります。 

ゲーミングGPUのビジネスは堅調であるものの、エンタープライズ向けGPUは最も需要の高い製品であり、プロフェッショナルシリーズでは公式価格が上昇しています。AIアプリケーションに使用されるQuadroシリーズの価格は、10~20%上昇しました。 

また、Tesla GPUもオープンマーケットで注目を集めているため、価格は5~10%上昇しており、なお上昇傾向が続いています。特にハイエンドシリーズの在庫は少なく、予約リードタイムは2~3週間延長されました。 

 

AIとハイパフォーマンスコンピューティングが特定のネットワーク製品に供給制限を引き起こす 

イーサネットアダプタカードの全体的な供給量は健全であり、需要が軟調なため現在の価格は下落傾向にあります。しかし、光ケーブル製品や高速スイッチは市場で注目を集めており、これは顧客がこのコンポーネントを高性能コンピューティングやAIアプリケーションなどの用途に使用していることに起因するためと考えられます。注目の高さにより、オープンマーケットでの供給制限が発生しました。  

ほとんどの高速スイッチのリードタイムは少なくとも少なくとも30~40週間ですが、ネットワーク投影の急増と世界的なAI技術の継続的な発展により、今後数ヶ月で拡大すると予測されます。ネットワーク製品の予測は非常に楽観的で、年間を通じて業界の成長が続くと予測されています。 

 

工業製品のリードタイムが最長1年に及ぶ 

Beckhoff、Phoenix Contact、Rockwellなどのブランドでは、工業製品が不足が生じています。その結果、製造業者が製造に必要な部品の確保に苦労し、割り当てが制限されているため、リードタイムが延びました。さらに、原材料費の高騰は供給状況の悪化を招くばかりです。 

現在、リードタイムは最短でも26週間、最悪の場合は1年に及んでいます。価格改定は6月に発表される可能性が高いものの、どの製品が影響を受け、どの程度価格が上昇するかは確認されていません。 

 

産業用および消費者向けファンに膨大な受注残 

原材料の不足により、すべての産業用および消費者向けファンのリードタイムが不安定になっています。三洋電機やDeltaなどのファン製造業者は、以前から供給制限に陥っていました。その結果、受注残は業界全体で徐々に増加し、製造能力が受注に追いつかないためにリードタイムが長くなっています。 

現在、特定シリーズのファンの予約リードタイムは52週間を超えており、出荷確認を待っている顧客に対してさらなる遅延が発生する可能性があります。 

 

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