インフィニオン(Infineon)とビシェイ(Vishay)が無錫市の火災の影響を受ける
フュージョン・ワールドワイドの2月のグリーンシートでお伝えした通り、中国の無錫市のめっき工場で発生した火災は、依然としてインフィニオンとビシェイに連鎖反応をもたらしています。火災は主にトランジスタとハイサイドおよびローサイドMOSFETやスイッチに影響を与えたことが確認されています。その結果、ディストリビューターとエンドユーザーは、メーカーによるデコミット通知の発行を予測して、利用可能な供給量を増やし始めました。
無錫市での火災により、インフィニオンとビシェイの部品を販売する正規ディストリビューターに対する制限が強化されました。この制限は、メーカーが今後数か月以内にサプライチェーンの不均衡を是正できるようになるまで継続します。
ビシェイのSQシリーズの生産はやや影響を受けましたが、市場への影響はそれほど顕著ではないでしょう。同社の製品で最も大きな影響を受けたのはMOSFET、特にSIxxxおよびSUxxxシリーズです。市場では4月まで生産のディスラプションの影響が感じられるでしょう。しかしメーカーの受注残はすでに影響を受けており、メーカーは今後の納品スケジュールを決定できていません。
ビシェイは需要に対応するために、新しいめっき工場に生産を移行する考えです。移行が完了するのは4月になりますが、生産開始までにさらに5か月を要します。
アナログ・デバイセズ(Analog Devices)のリードタイムに改善の兆し
最近発行された公式通知によると、アナログ・デバイセズの製品リードタイムは2023年に改善する見込みです。同社の製品ポートフォリオの半分はリードタイムが13週間未満となっており、こうした改善の一部は、AD7/8xxxシリーズなどの需要の少ないリニアテクノロジー(Linear Technology)製品の減産など、戦略的な生産量削減によるものです。同社は直近四半期の決算発表で、供給に対処するための戦術は、社内生産量の増加とファウンドリ・パートナーとの緊密な協力に焦点を当てていることを明らかにしました。
今年10月までに、アナログ・デバイセズ製品の95%、合計75,000種類を超える固有部品のリードタイムが13週間より短くなります。
マイクロチップ(Microchip)が5%値上げ
マイクロチップは前四半期に、原材料不足が生産量に影響を与え、リードタイムがさらに長くなったと発表しました。EEPROM部品など一部の製品のリードタイムは50週間を超えました。特にATMEL SAMおよびATMEGAシリーズは年明けにかけて供給が悪化し、同社はNCNRの注文のみを受け付けていました。
それでもマイクロチップは、顧客が共通部品の納期を先送りしたため、引き続き需要の低迷に悩まされました。こうした納期先送りによる売上高の損失に加え、原材料コストの上昇によって、マイクロチップ製品の価格は約5%上昇しました。
公式通知はまだ保留中であるため、今回の値上げが、需要が旺盛でリードタイムが長期化している製品群のみに適用されるのか、あるいは同社のポートフォリオ全体に適用されるのかは不明です。
多くの場合、メーカーによる値上げは戦略的な動きですが、そうした戦略が成功するかどうかはまだ分かりません。顧客がコスト削減を実現できる代替品を探しているため、需要は減少する可能性があります。
STMicroは引き続き自動車部品の供給で苦闘
STMicroの部品が流通する市場は緩やかに回復しており、ディストリビューターにとって価格交渉の余地が広がっています。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらす影響の長期化、エレクトロニクスへの需要の増加、サプライチェーンのディスラプションにより、自動車部品の不足が継続しています。
もう一つの要因は、複数ティアのサプライヤーが関与する自動車サプライチェーン全体の複雑さです。こうした複雑さが、混乱する局面での業界の方向転換を困難にしています。その結果、顧客は自動車部品の調達先としてオープンマーケットにますます目を向けるようになっている一方で、同じ部品を巡る複数の業界間の競争が激化しています。そのため、需要の旺盛な自動車部品のリードタイムは長期化しており、納期は2024年後半となっています。
現時点で、以下の部品のリードタイムが改善していません。
これらの部品は自動車、産業、医療家電、IoT製品で応用されており、リードタイムは40〜52週間です。リードタイムがこの範囲の上限となっているのはF4シリーズですが、VNSxxxおよびL9XXXシリーズに対する需要も依然として旺盛であり、いずれも市場での可用性はほぼ皆無です。
SSD市場の需要は横ばいだが、2023年後半に回復する兆しがみられる
SSD、特にエンタープライズSSDの価格設定に目を向けると、オープンマーケットの価格設定が依然として販売会社のコストをはるかに下回っているため、2021年10月に始まった急激な下落が継続すると予想されています。また、最終顧客は過剰供給された大量の在庫を市場に送り込んでいますが、オープンマーケットの価格設定が依然として販売会社のコストをはるかに下回っているため、価格設定が深刻な打撃を受けるでしょう。
全体としてHDD需要は横ばいですが、16TBや18TBなどの大容量ドライブにはいくつかの明るい材料があります。これのドライブの供給は20TBや22TBと比べて安定しており、価格設定は競争力があるものとなっています。ただし、顧客は新しいSSDシリーズへの切り替えをためらっているため、移行が予想よりも遅れています。こうしたためらいは、顧客の既存在庫水準の高さに起因しており、既存在庫が払底するのは2023年第2四半期末前後になる可能性があります。顧客の在庫がより妥当なバランスを取り戻すまでの間、需要は横ばいで推移すると予想されます。
ストレージディストリビューターが過剰在庫の保有を回避しようとしているため、ここ数四半期のストレージ需要は低調です。過剰在庫を保有しないことは堅実な戦略ですが、在庫水準が高い状況は続いており、リードタイムが大幅に短縮されて顧客にとって切迫感がなくなっているため、この戦略を維持するのは困難です。現在のリードタイムは2週間です。
ところが販売会社は、ストレージ市場が2023年下半期に回復すると楽観的な見方をしています。この楽観的な予想の背景には、2021年に出荷されたストレージの容量が全体的に前年比で増加したために購買行動が変化したことがあります。さらに購買パターンを見てみると、様々な業界で生成および保存されるデータの範囲が増加の一途をたどる中、この勢いが2023年も続くことが予測されます。
顧客の過剰在庫がメモリーモジュールのオープンマーケットに打撃
特に32GBと64GBのRDIMMの過剰在庫を抱える顧客は、余剰分をオープンマーケットに送り込み始めています。オープンマーケットにおける在庫の増加は、既に過剰な水準に下落している価格設定に影響を与えています。メーカーは、メモリーモジュール価格のさらなる下落を回避するために最善を尽くしており、ディストリビューターに顧客向けの特別価格設定の承認を制限するよう要請しています。
過去数か月にわたる世界的な品不足が、128GB RDIMM 3200の需供に影響を与えています。この品不足は主に不十分な予測によるものです。過去においてはこの密度のメモリーに対する需要は最小限でしたが、顧客の関心が突然高まったことにより、価格はこの数四半期で着実に上昇しています。現在の価格設定は公式価格設定より20%も高く、供給が改善されなければさらに上昇する可能性があります。
AIサービスはGPUの需要に影響を与える可能性
ChatGPTやBARDなどのAIサービスが高い関心を集める中、高性能GPUの販売会社はこうしたAIサービスが市場に与える影響について考え始めています。市場予測は、需要が堅調に推移すればGPU市場は今年中に15%以上成長する可能性があるとみています。エヌビディア(Nvidia)のAmphere A100およびHopper H100アーキテクチャは市場最高の性能を持つGPUの1つであるため、同社はこれらのGPUの開発から最も恩恵を受けるでしょう。結果として、同社の株価は既に40%上昇しています。
AI向けGPUビジネスは急拡大すると予想されており、メーカー各社はゲーム顧客よりもAI顧客向けの生産と供給を優先する可能性があります。この状況により、既に制約を受けている消費者向けGPU市場で供給の問題がさらに発生する可能性があります。
産業用ファンとラズベリーパイの不安定な供給が引き起こすリードタイムの長期化
産業用ファンの供給が悪化しており、ソーシングニーズを満たすためにオープンマーケットに目を向ける顧客が増えています。こうした品不足の主因は、プリント回路基板アセンブリ(PCBA)段階における供給の制約です。これらの原材料も電気自動車業界にとって不可欠であり、複数の業界が供給を巡って競争しているため、生産量の割り当てが困難になっています。目下の受注残と原材料不足により、リードタイムは58〜78週間に達しています。
1月以降、ラズベリーパイが品不足に陥っており、今も供給が不安定な状態が続いています。未消化注文がかなり積み上がっており、販売会社は到着予定日/時刻(ETA)に関する確固たるコミットメントを提供できていません。顧客はオープンマーケットへの依存度を高めていますが、オープンマーケットでの価格は通常、直接価格の3〜5倍であるため、入手可能な部品はプレミアム価格の対象となっています。
ラズベリーパイの人気の一因はその価格の低さにありますが、品不足によりオープンマーケットでの価格設定は過去数か月で認定小売業者の価格を50%〜200%上回るようになっています。注文配送が明確でないにもかかわらずコストが膨らんでいるため、顧客はオープンマーケットでの調達をためらっています。
2022年第4四半期に過去最低を記録した後、CPU市場の需要が変化
2022年第4四半期のCPU売上高は、ラップトップとデスクトップ向けの出荷が大幅に減少したため、過去最低水準に沈みました。この状況は主にインテルとAMDに関わるPC業界に影響を与えましたが、両社は混乱に積極的に対処するための措置を講じています。その主な戦略はCPUの出荷量の絞り込みであり、両社のCEOはこの方針を実行し始めて以降、この戦略を明確に表明しています。ただしAMDは、需要の改善に従い、第1四半期にはこの戦略を採用する必要性は低下すると発表しました。
先月は、オープンマーケットでCPUを巡る活動が活発化し、流れが変わりました。こうした変化が起こったのは、顧客が前四半期から高止まりしていた在庫水準にようやく対処しているためです。最終顧客が保有する在庫は今年第2四半期末までに払底するため、下半期には需要が回復することが予想されます。
インテル、EOLの発表を活用して顧客を最新テクノロジーに誘導
インテルでは最新の第12世代Alder Lakeと第13世代Raptor Lakeの両シリーズの需要が低迷しているため、同社はEOL通知を活用して受注を増やしています。この戦略は、第11世代Rocket LakeデスクトップCPUに影響を与えるでしょう。最終的には400および500シリーズのチップセットが段階的に廃止されます。
これらのシリーズのチップセットがEOLになることで、依然として古い世代を使用している顧客は新しい製品への移行を間接的に強いられるでしょう。さらに、第10世代Comet LakeデスクトップCPUを使用している顧客も、依然として保留となっている同CPUのEOLが発表されると予測しているため、最新の世代のCPUシリーズへの転換を進めています。
EOL通知に呼応する形で、影響を受けるチップセット、特にH510チップセットなどの500シリーズチップセットへの需要が高まっています。EOL通知によって結果的にこれらの部品は品不足に陥っており、それを受けてオープンマーケットにおける第12世代Alder LakeおよびノートブックCPUを巡る動きが活発化しています。
さらに、インテルは第10世代Comet Lakeに設定していた特別価格を廃止し、さらに第12世代Alder Lakeの価格設定を20%引き下げることにより、PC顧客向けの価格を調整しています。こうした価格設定の変更は、顧客がより新しい製品に目を向けるよう促す戦略の一環です。
コスト削減機会を求めてオープンマーケットに目を向けるサーバーCPU顧客
オープンマーケットでは、デスクトップやモバイルCPUよりもサーバーCPUに関する問い合わせと取引が増えています。その多くはインテルのIce Lake、Cascade Lake Refresh、Cascade Lakeに集中しています。こうした動きの原因は、インテルが旧シリーズの特別価格設定を撤廃し、顧客がオープンマーケットでコスト削減の機会を探していることから生じている可能性があります。
さらに、インテルは第4世代のXeon Sapphire Rapids CPUを発売し、古い世代のCPUの供給量を徐々に削減していますが、一部の顧客は割り当て量増加を求めています。
インテルのSapphire RapidsとAMDの Genoaへの需要は最小限となっていますが、これらの製品に移行する顧客が増えるにつれて需要は増大するでしょう。