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2023/07/11 14:03:01
 

グリーンシートは、オープンマーケットのサプライチェーンに影響を与えるトレンドに関する、Fusion Worldwideの月次レポートです。半導体、完成品、ハードウェア部品に関する当社の最新レポートをご覧ください。 

7月のグリーンシートの注目ポイントをいくつかご紹介します。 

  • 製造業者はNCNR PSPと契約して価格を守り、需要を確保するとともに、顧客に注文の遅れを回避するチャンスを与えています。 
  • Cypressのリードタイムは依然として長く、現在、制約付きシリーズは割り当ての対象となっています。 
  • Infineonの供給制約により、産業顧客と自動車顧客の間で競争が激化しています。
  • IntelからのEOL通知は、その他の点においては軟調なCPU市場に需要を呼び込んでいます。
  • DC-DCコンバータの不足はすべてのブランドに広がっており、顧客は、供給を確保するためにオープンマーケットに目を向けています。 

自動車業界の顧客と産業界の顧客間の競争は、依然として激しくなっています。とは言え、AI産業の成長と消費者需要の回復に伴い、これらの市場は、今後数か月で冷え込む兆候を示す可能性があります。市場動向の詳細については、レポート全文をご一読ください。 

 

 

集積回路 

Cypressの生産能力問題と長引くリードタイム 

InfineonCypressの買収を完了した2021年当時、パンデミックがもたらした継続的な難題により、通常レベルを下回る製造が行われていました。この買収の当初の意図は、Infineonを自動車産業向けチップの最大の製造業者にするとともに、モノのインターネット (IoT) 市場で高まるニーズに対応できるようにすることでした。  

しかし、製造が徐々に回復してきたにもかかわらず、依然として長いリードタイムが続いています。現在、CY7、CY8、CY9などのMCUシリーズに加え、S25S29などの旧バージョンのSPANSIONが、不足による影響を受けています。これらの部品はまだリードタイムが長く、Cypressからの割り当ての対象となっています。 

 

産業顧客と自動車顧客による限られた供給の奪い合い 

InfineonTLE、IPD、AUIR車載用シリーズは、長期的な供給不足に直面しており、価格も高騰しています。IPW65/90、IPB65、IPP65/IPW90などの高電圧MOS部品も供給不足に陥っており、リードタイムは50週間を超えています。 

そのかわり、InfineonSAKおよびBSSシリーズの供給は、徐々に回復しています。しかし、リードタイムは依然としてばらつきがあり、多くの場合は長くなっています。 

さらに、InfineonIKZおよびIKWシリーズIGBTの需要が高まっていますが、現在のリードタイムは3950週間となっています。これらのシリーズには、産業用SMPSUPS、制御機器など多岐にわたる用途があります。その他の用途には、FPGA、ソーラーストリングインバータ、エネルギー貯蔵システム、充電器、ホームゲートウェイ、電化製品、コンピュータサーバおよびシステムなどがあります。このような幅広い用途のため、複数の業界が長いリードタイムの影響を受けており、限られた供給を奪い合っています。 

 

FMシリーズのリードタイムの短縮とコスト削減が実現 

主に自動車、デジタル、電気製品に使用されるInfineonFMシリーズのリードタイムは、現在約20週間です。特にF1シリーズは勢いを増しており、F1については供給が容易になったことで、F2シリーズやF3シリーズに取って代わる可能性を秘めています。  

予測では、STM32Hは供給が制限され、リードタイムが長くなり、結果として価格が高騰した後、第3四半期から第4四半期の間に回復すると推定されています。しかし、全体的な需要が依然として高いため、回復は特定のMPNに左右されます。最も影響を受けたMCUにはSTM32F4XXX、STM32F7XXX、STM32H7XXがありますが、リードタイムは徐々に短くなっています。  

代理店の多くは、将来予測に基づいて、製造業者と固定価格契約を結ぶことを検討しています。この戦略が好まれるのは、未だ下落していない製造コストの高さに起因すると思われます。ただし、価格は最安値に達すると予測されているため、顧客は今後3か月間の市場動向を注視する必要がありそうです。 

 

製造業者が対抗手段としてNCNR PSP契約を提示  

中国の現地ブランドとの競争により、最近はオンラインでの部品価格が下落しています。より安価な代替製品が普及し続ければ、価格はさらに下落する可能性があります。顧客がコスト削減を求め続けているため、電源管理製品は現在最も大きな落ち込みを見せています。 

製造業者は、ブランドロイヤルティを高めるため、PSP100%ディレイと呼ばれるNCNR契約の導入を開始しました。この契約は、両者にとってWin-Winのシナリオを描きます。つまり、製造業者は確実な需要を確保することで利益を獲得でき、顧客は遅延を回避するチャンスを得ることができます。ただし、この契約は、リードタイムの具体的な短縮を保証するものではありません。

 

 

 

CPU

デスクトップ向けCPUが期待に届かずゲーミングノートPCの販売が増加 

全体的に、IntelAMDのデスクトップCPUの需要は低いと考えられます。6月に開催された618 Shopping Festivalでは、主にIntelのデスクトップ向けCPUである第12世代Alder Lakeの取引が、中国市場で増加すると予想されました。しかし、連休明けの販売実績は、予想を下回りました。  

IDCの調査によると、ノートPCとデスクトップPC市場においては、すべてのeコマースプラットフォームでの販売台数が昨年比で13%減少しています。特筆すべきは、高品質な製品に対する消費者の欲求が、次第に高まっていることです。 

調査によると、オンラインゲームの人気によりゲーミングノートPCの需要が伸びたとのことで、これはPC市場では異例です。618 Shopping Festivalの期間中においては、ゲーミングノートPCは売上の50%を超えました。 

 

IntelのEOL通知によりオープンマーケットが活性化 

Intelが第11世代Tiger LakeモバイルCPUの生産終了 (EOL) を発表したことで、第11世代Tiger LakeゲーミングHシリーズCPUの供給が減少しました。一方、第12世代Alder Lakeと第13世代Raptor LakeゲーミングHシリーズの供給は、依然として需要を満たしています。 

とは言え、EOL通知は、ほとんどの顧客がこれらのCPUを買い占める火種となり、オープンマーケットが活性化しています。問い合わせは主に、IPU版、非IPU版のi3、i5、i7シリーズに集中しています。価格は上昇傾向にあり、在庫は少なくなっています。 

 

AI、クラウド、データセンターの顧客ニーズをターゲットにした新型CPU 

Intelは、次期の第14世代となるMeteor Lakeについて、第13世代のRaptor Lakeを上回る大幅な技術的強化を施した製品と謳っています。第14世代Meteor Lakeプロセッサには、AIタスクをより効率的に実行するためのビジョン・プロセッシング・ユニット (VPU) が内蔵されます。この製品は今年発売の可能性が高いものの、販売初期では高値がつけられると思われます。コストを懸念する顧客については、価格下落まで新型プロセッサの購入を待つことも考えられます。 

Intelが旧世代シリーズのサポートを徐々に削減し、新型製品に注力するようになれば、オープンマーケットに新たな波が訪れることも考えられます。 

また、AMDは、最新のZen4C CPUコアを搭載した、EPYC Bergamo CPUのプロモーションをすでに行っています。AMDは、この製品をクラウドおよびデータセンターサーバ業界向けに設計しており、その性能は、市場の現行ハイエンドサーバ用CPUを上回ると言われています。 

Tier 1顧客には、AMD6月中旬頃にリリースしたこれらの高性能CPUの最初の出荷ロットが、優先的に与えられました。 

 

正規代理店への在庫プレッシャーが加熱 

IntelAMDについては、サーバ用CPUの動きは依然として微々たるものです。6月にはスポット需要と取引が持ち直したものの、Tier 1顧客は保守的な購買パターンを維持したため、取引は最小限に留まりました。その後、オープンマーケットでの価格は下落を続けています。 

需要の低迷に加え、チャネル在庫の増加が軟調な市況の一因となっています。正規代理店はここしばらくの間、在庫をより多く保有しており、最大では6か月間倉庫に保管されているものもあります。製造業者は、売れ残りの商品に対して、ごく一部の返品しか認めていません。これが在庫プレッシャーを加熱させており、さらなる値下げがその結果として生じています。 

顧客が徐々にAMD Genoaシリーズに移行する中、AMD RomeおよびMilanシリーズが最も大幅な値下げを見せました。 

 

 

 

ハードウェア 

原材料価格と生産コスト上昇によりHDD製造業者が価格を引き上げ 

SeagateWestern Digitalは、原材料価格と製品コストの上昇を理由に、すべてのシリーズとモデルで10%から12%の値上げを発表しました。この価格変更に伴い、16TB以上の大容量HDDの需要に光が見えてきました。 

ここ数か月の市況の低迷により、SSDの供給は引き続き健全です。これを受け、SSD製造業者は減産を行い、在庫が安定から余剰に変動しないよう、供給管理を強化しています。製造業者は、オープンマーケットでの供給が減少することで、価格が回復することを期待しています。しかし、これには大幅な需要回復が必要となります。 

 

DDR5の不足によりサーバモジュールの需要が勢いを増す  

中国におけるMicron製品の一部使用禁止を受け、サーバモジュールの需要は着実に増加しています。この禁止措置は、入手可能量の制限に備えるため、一部顧客による買い占めを招きました。サーバモジュールの価格が史上最低を記録したものの、右肩下がりの下落は食い止められたため、緩衝在庫を確保しようとする顧客は、オープンマーケットをこれまでに以上に注視するようになっています。 

さらに、顧客の根強い需要にもかかわらず、製造業者は特別価格の承認をすべて拒み始めています。第3四半期初頭には、コストが徐々に上昇するであろうというという見方も存在します。 

サーバモジュールの需要と同様、AI業界からの注文急増後にDDR5メモリが特に求められるようになり、すでに入手困難となっています。高密度DDR5サーバモジュールは、主に高性能コンピューティング用途に対応可能であることもあり、依然として、メモリモジュール市場で最も回転率の高い製品です。入手しやすくなるまでには、しばらくの時間を要するでしょう。 

 

投資家によるチップ産業 への投資を受けNVIDIA株が最高値を更新   

投資家が電子部品業界の未来に信頼を寄せて投資を行ったことで、人工知能 (AI) 市場が好調となり、NVIDIAの株価は今年に入り163%上昇しました。NVIDIATeslaシリーズは、依然として非常に高い人気を誇っています。とは言え、NVLINKSXM4インターフェイスはPCIEインターフェイスよりも高性能なため、需要はさらに上昇する傾向にあります。 

これらのシリーズについては、問い合わせの増加により入手困難となっています。供給の割り当ては厳しく、発注のほとんどはスーパーコンピュータシステム・プロジェクトに指定されています。 

さらに、Quadroシリーズの供給もいくつか改善され始めており、上位シリーズで最も大きな変化が見られます。需要に変化は見られないものの、価格は下落傾向にあります。 

 

Intelの事業戦略によりサーバのリードタイムが延長 

Intelは、IDM2.0戦略を優先するため、Data Center Solutions Group (DSG) から撤退し、専用サーバ部門をMiTACに売却しました。Intelは以前、Optane、SSD、およびネットワークスイッチ事業から撤退しており、DSGの売却は同社が行ってきた多くの変更のひとつです。同社はまた、5Gモデム事業からも撤退しました。 

MiTACによるIntelのサーバ事業の買収が供給の混乱を招いたと伝えられており、追って通知があるまでリードタイムが延長されることとなります。生産能力が回復するまでは、新規受注は不可能となります。 

 

AI業界によりMellanoxの予約価格が上昇する可能性あり 

AI業界の成長により、ネットワーク製品の需要が高まっています。とりわけMellanoxは、ここ最近で同社の開発の恩恵を最も受けてきたブランドです。上位モデルのリードタイムは全体的に延びており、200GBスイッチのリードタイムは30週間を超えると推測されています。さらに、ほとんどのMCX6およびMCX7イーサネットカードのリードタイムは、1015週間となっています。 

この傾向は、2023年まで続き堅調すると予測されています。MellanoxNICカードとケーブルの新規予約価格は、510%上昇すると推測されています。これらの製品により、AIシステムは信頼性が高く効率的なネットワーク接続が可能になります。 

 

Raspberry Piの供給は改善傾向も限定的 

特定のRaspberry Piシリーズは、幾分入手しやすくなってきました。しかし、需要と供給の不均衡が安定するまでは時間を要するため、代理店は一過性なものに過ぎないと考えています。長期にわたる取り寄せ注文に対応しうる供給を、年末までに確保できるかどうかは不明です。一部の自動車ベンダーがRaspberry Piボードを限定的な用途に使用していることから、Raspberry Piボードの用途が拡大しており、需要に減速の兆しは見られません。 

現在、製造業者はPi 3よりもPi 4のサポートに生産能力を割いている状態です。Raspberry Pi 4は、Raspberry Pi 3よりも性能、ネットワーク機能、温度管理の点で大幅にアップグレードされているものの、Raspberry Pi 3は、コスト面での懸念がある顧客にとっては、依然として現実的な選択肢です。リードタイムに誤差はあるものの、ほとんどの場合は延長しており、最短でも30週間前後で推移しています。 

 

DC-DCコンバータの不足により顧客はオープンマーケットを模索 

現在、絶縁型DC-DCコンバータはすべてのブランドで品薄状態で、中でもCoselへの影響が顕著です。Cosel1年以上前から品薄に悩まされており、生産が需要に追い付かない中で受注残が増加する一方でした。品質への懸念から、同ブランドの常連となっている顧客がいる一方で、入手しやすい代替ブランドを求める顧客もいます。特に中国市場では、現地ブランドのMornsunMeanwellが注目されています。 

これらの製品の需要は非常に高く、平均リードタイムが最短1年以上に延びたため、顧客は安定供給を求める姿勢を強めています。このような事情から、多くの人がオープンマーケットに目を向け、割高で入手することにも前向きとなっています。

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