NXPとSTMによる供給不足は新年まで続く
NXPは、高電圧MOSFETおよびMCUシリーズの市場での可用性が引き続き厳しい状況にあるため、依然として供給が需要に追い付いていません。自動車部品と産業部品は引き続き供給が最も逼迫している部品であり、いずれも供給不足が緩和される兆しはありません。また、NXPは特定の市場でのアロケーションを制限し続けているため、S1912およびMKシリーズへの需要が高まっています。第4四半期のアロケーションも2023年に先送りされると報告されています。
製造能力への制約が継続することで、旧式製品であるFreescaleシリーズMC9S08、MC9S12、MK、およびMCF5の供給にも影響が及んでいます。これらすべての製品について市場での供給不足が長期化しています。
同様に、需要が旺盛なSTMの部品には改善が見られず、この状態は今後6か月間にわたり継続すると予想されています。供給と需要の不均衡が最も大きいのは、STMのF4、MCU、SPCシリーズ、および特に自動車部品です。現在の市場では、特にSTM32の供給も不安定になっています。厳しいアロケーションによりリードタイムと在庫の可用性が制約を受けており、特にF4シリーズでその傾向が強まっています。
供給の改善はあまり進展していませんが、値上げを示唆する発言はありません。
さらに、STMでは以下のシリーズのリードタイムが延長しています。
風聞によれば、VN/VNQXXXシリーズ、特にVN5T006ASPTR-Eが2023年第2四半期まで供給されない模様です。自動車顧客には、オープンマーケットでバッファー在庫を探し始めることが推奨されます。
ザイリンクス(Xilinx)とシリコンラボ(Silicon Labs)が製品の値上げを計画
報道によると、ザイリンクスは年明けにすべての製品の価格を引き上げる計画です。AMDは、2023年中にすべてのザイリンクス製品在庫を一掃し、生産のリードタイムサイクルを短縮したいと考えています。現在のリードタイムは以下のとおりです。
シリコンラボも一連の自社製品を値上げすると発表しました。顧客に送られた公式通知の説明によると、価格が急上昇した理由は、世界的なキャパシティ危機とほぼすべての業界における全般的なインフレによってサプライチェーンのコストが上昇したためです。
一連の価格変更はすべての既存の製品群およびSeries1製品に適用され、その対象には2023年1月1日時点での既存の受注残が含まれます。その通知には、シリーズ1および2のSoCおよびモジュール製品、またはEFR32xxxで始まるSoCワイヤレスBluetoothシリーズMPNは値上げの対象に含まれないと記載されています。
価格上昇率がどの程度になるかに関する公式な文書はありませんが、15%前後と予想されています。
別の通知によると、Si-xxxシリーズは、スカイワークス(Skyworks)に移管された後にリードタイムが長期化し、供給不足が深刻化しています。
FPGA市場内での競争が激化
ラティスセミコンダクター(Lattice Semiconductor)はミッドレンジFPGA市場に参入すると発表しました。これにより同社の市場シェアは2倍になると予想されています。この決定は、同社の顧客のニーズがどのようなものか、需要がどこに向かう可能性が高いのかに関する徹底的な調査を踏まえたものです。この調査により、イノベーションへの関心が高く、需要が特に高いのはミッドレンジ分野であることが判明しました。
同社のミッドレンジFPGA製品の新しいテクノロジープラットフォーム(名称はAvant)が、このプラットフォーム上に構築される最初のミッドレンジシリーズと共に発表されました。最初のミッドレンジシリーズの名称は “Avant-E” となります。
ラティスはさらに、コンピューティング、自動車、および産業市場での競争力を強化するため、ミッドレンジシリーズの開発で得た知識を、すでに同社の名前が知られている小型FPGAにも適用すると予想されます。
揺れ動く中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策によるCPU市場の混乱
CPU業界では供給過剰状態が続いており、すべての地域からの報告によると、需要が依然として低迷していることを示唆しています。中国市場はここ数週間、パンデミック規制政策が再び敷かれたことによって大きな影響を受けています。中国全土の多くの工場にとって、プロジェクトのキャンセル、生産の遅れ、出荷の先送りが継続的な問題となっています。その結果、オープンマーケットに過剰在庫が大量に供給され、あらゆるセグメントで価格が下落しています。
年末が近づき、価格動向の2023年上半期の行方が明確でないため、コスト削減の機会が制約される可能性があります。
加えて、中国は政策を変更し、COVID-19規制を撤廃しました。これにより、より多くのビジネスがPCおよびサーバー市場にもたらされる可能性があります。
景気低迷と年末需要の低下によるAMDとインテルへの影響
インテルの生産体制は現在、第12世代デスクトップCPUのAlder Lakeに注力しています。しかし、景気が低迷し、年末が近づいているため、ディストリビューターはあまりバッファー在庫を積み上げていません。サプライヤーはインテルの製品を追加で引き受けることには消極的ですが、AMDは引き続き競争上の優位性の強化に取り組んでいます。AMDは最近、インテルが今後投入する予定の第13世代デスクトップCPU、Raptor Lakeとの競争を優位に進めるため、最新のRyzen 7000シリーズの価格を調整しました。
現在の市場で入手可能な第13世代のRaptor Lakeは、KモデルおよびKFモデルのみです。i3/i5/i7の共通シリーズは2023年第1四半期に発売される予定です。さらにディストリビューターは、インテルが第14世代のMeteor Lakeを2023年第3四半期までに発売すると予想しています。
インテルのイーサネットチップセットのオープンマーケットでの価格設定は、需要の落ち込みに伴い、ここ数週間で着実に低下しています。販売会社は現在、在庫への圧力を軽減するため、積極的に損失を計上しています。オープンマーケットでの価格設定がインテルの直接コストを大きく下回る状況であるにもかかわらず、販売会社は価格の下落傾向が続くと予想しているため、顧客の需要はまだ回復していません。
一方、特にデスクトップ向けチップセットH510およびインテルのイーサネットチップセットi 211ATのオープンマーケットでの在庫は不足しています。チップセットのEOL(生産終了)はすでに発表されており、最終生産終了日は2022年4月となりました。
Sapphire Rapidsの発売に伴うサーバー顧客との価格調整
インテルの新しいSapphire Rapidsの発売時期は2023年第1四半期と予想されていますが、サーバー顧客はすでにこの製品の発売による影響を受けています。価格設定の調整以外にも、インテルは旧シリーズのCascade Lake、Cascade Lake R、Ice Lakeの生産量を変更しています。
オープンマーケットでは、サポートを求めるサーバー顧客が増加しているため、上記のサーバーCPUの供給量は明らかに縮小しています。影響を受けている顧客には、いくつかのTier 1コンシューマーが含まれます。
現時点で最も影響を受けているのは、32XXと32XXRを含むエントリーレベルのXeon CPUです。ただし、在庫水準が低下していることが明白です。
ストレージ/メモリー市場の回復の兆し見えず
第3四半期のSSD市場全体の売上高は前四半期28.7%減の52億2,000億ドルとなりました。エンタープライズSSDの価格設定は下落傾向が定着しており、顧客がプロジェクトをキャンセルし、過剰在庫の積み増しに抵抗していることによって、さらなる打撃を受けています。
サムスン(Samsung)のシリーズS4510(240GBと480GB)は依然として需要が最も旺盛なモデルであり、顧客はコスト削減の機会を積極的に追及しています。ただし、需要が軟化しています。販売会社は現在の在庫が損失をもたしているため、在庫を減らしています。
メモリーモジュールの需要が低迷し続けているため、メーカーは戦略を変更しています。Micronとハイニクス(Hynix)は、価格の下落を抑制するため、DRAMとNANDの生産量を削減しました。一方、サムスンは生産を継続していますが、価格の下落に歯止めをかけています。ただし、価格は四半期ごとに下落しています。こうした戦略の変更は、需要が増加していないにもかかわらず起こっています。
ディストリビューターは、価格設定が毎日変動する状況から自身を守るため、メーカーからのback-to-back契約(取引リスクをメーカーに転嫁する)に基づいて発注しています。
RTX 30シリーズへの需要が急増とGPU市場の予想に反した動向
関税免除の有効期限が12月31日に迫る中、有効期限が延長されるかどうかは販売会社と顧客にとって依然として未知数です。そのため、顧客は万一の場合に備え、追加の在庫を購入しています。その結果、特に空冷仕様のRTX 3090の価格が週を追うごとに4~8%上昇しています。
RTX 4080および4090が発売されたにもかかわらず、RTX 30シリーズへの需要は高騰し続けています。顧客は今や、主に新しいRTX 40シリーズの使用がプロジェクトやプロダクションで指定されていないことを理由に、RTX 3080および3090の調達先としてオープンマーケットに依存しています。
RTX 4080が最初に発表された後、同製品への需要は大きく落ち込みました。その主な理由は、RTX 4090と比べた価格設定と性能レベルにあります。ヨーロッパ通貨の下落とAMDの7900 XTXの発売により、RTX 4090および4080シリーズの価格は5%下落しています。
エヌビディア(NVIDIA)のRTX 4070 Tiは2023年1月5日に発売される予定です。これにより、RTXシリーズの製品ラインナップはより充実したものとなります。
ほとんどの製品の供給が改善しているのに対して、メラノックス(Mellanox)のスイッチの供給は依然として逼迫
メラノックスのほとんどの製品のリードタイムは短縮されており、可用性は改善されています。これは主に、在庫のオーバーフローとオープンマーケットへの流入をもたらした顧客からの過去のダブルブッキングのおかげです。
その例外はメラノックスのスイッチで、同社のスイッチの供給の逼迫は深刻化しています。ICとチップ部品の不足に加え、需要に関する顧客の見積もりが実際の需要を下回ったせいで、スイッチのリードタイムは8~12か月に長期化しています。最も影響を受けたシリーズが7800と7890です。これら2つのシリーズは2023年第2四半期にEOLを迎えると予想されているため、販売会社は現在リードタイム注文を受け付けています。
半導体供給不足、業務用電源とRaspberry Piの在庫に影響を与える
ほとんどの業務用電源で、主に部品の不足に加え、電気自動車および自動化製品への需要の増大により、リードタイムの長期化が10~24か月間に及んでいます。影響を受けたブランドは、コーセル(Cosel)、フェニックス・コンタクト(Phoenix Contact)、ワイドミュラー(Weidmüller)、TDK、プルス(Puls)などです。リードタイムが改善される可能性は短期的には低いと思われます。
同様に、Raspberry Piの供給は、コンピュータの小型化と低コストによりここ2~3年で急増している需要を満たすことができていません。メーカーによるダイレクト受注残は1年半分にも達しており、そうした受注製品が納品されていないため、増加の一途をたどっています。需給が安定するには少なくともあと1年はかかると思われます。そのため、オープンマーケットでの価格設定は、直接的な価格設定の少なくとも3〜5倍に達しています。