Global Electronic Component Supply Chain Resources

THE GREENSHEET 2022 年 8 月号

作成者: Fusion Worldwide - JP|2022/08/03 19:19:26
 

CPU

見えてきたコスト削減の機会

中国の顧客による注文のキャンセルやサーバーCPUのプロジェクトの延期に伴い、供給が徐々に回復し、価格も低下傾向にあります。納品のリードタイムは、予測の変化や在庫レベル上昇の影響を受ける可能性がありますが、全般的傾向は、現在の市場をうまく活用しようとする顧客にとって有利なものとなるでしょう。

 

イーサネットコントローラの品不足により促進される再設計、代替

WGI210IT イーサネットコントローラI210-ITおよびWGI210IS イーサネットコントローラ I210-ISに対するオープンマーケットの需要は低減したものの、供給は依然として制約された状態です。顧客のニーズに応えるため、インテルはWGI211ATイーサネットコントローラI211-ATを100万台リリースしたと報じられていますが、これにより現在の需要と供給の不均衡が緩和されるかどうかは不明です。これはWG1211ATのEOL PCNに先立つものです。EOL PCNについては、2022年4月22日が最終生産終了注文日、2022年10月22日が最終生産終了発送日となります。推奨代替商品は以下の通りです。

WGI210AT イーサネットコントローラ I210-AT

KTI225LM イーサネットコントローラ I225-LM

KTI226LM イーサネットコントローラ I226-LM

KTI225LMまたはKTI226LMを使用するためには、マザーボードのレイアウトに変更を加える必要があります。供給が未だに制約された状態であり、かつ需要の増加によりリードタイムと価格が上昇する可能性があるため、WGI211ATやWGI210ATを利用しようとする場合は、できるだけ早く購入すべきです。

 

インテルの世代Comet Lakeおよび世代Rocket Lakeに対する需要の上昇傾向

中国国内の需要により第11世代Rocket Lakeおよび第12世代Alder Lakeに対する関心が高まり、多くの顧客がオープンマーケットでのソーシングに進んでいます。さらに、インテルの第10世代Comet LakeデスクトップCPUでは、i5-10400、i5 –10500およびi7-10700が最も売れ筋のモデルで、問い合わせや取引が増加しつつあります。第10世代Comet LakeデスクトップCPUは2020年に発売され、製品のライフサイクル終了時が近づいています。この部品の需要が常にある顧客は、供給が枯渇する前に備蓄品を購入すべきです。第11世代Rocket Lakeの価格は少なくとも2%上昇しているにもかかわらず、インテルのデスクトップCPUの顧客には、まだコスト削減の機会があります。

 

 

メモリ

メモリーモジュール分野に見られる活況

前四半期におけるメモリーモジュールの全般的需要は低下傾向にありましたが、最近のオープンマーケットは活況を呈しています。価格設定傾向を追跡している顧客は、オープンマーケットにおけるPPVのコスト削減機会を活用しようとしています。

6月のレポートによると、供給が需要を上回るため、価格の低下傾向が続くものと予測されます。メーカーは依然として目標達成を目指しているため、販売会社はメーカーに対し数量と注文数を約束することを余儀なくされています。16GB、32GBおよび64GBの価格は5~8%低下しています。このまま需要が低水準で推移し、販売会社が高い在庫レベルを担うことになる場合は、翌四半期もこのパターンが続くものと予想されます。

 

 

完成品

インテルとメラノックス(Mellanox)の顧客に対する供給状況は改善するものの、長期継続は期待薄

アジア一帯で見られたプロジェクトのキャンセルにより、メラノックスのMCX4およびMCX5の可用性と価格は改善しましたが、MCX6シリーズの供給は逼迫した状況が続いています。グローバルな需要が依然として高いため、余剰がある状態や価格低下傾向は長く続かないと思われます。さらに、2023年上半期に予定されているEOLの通知により、MCX5シリーズの生産が50%削減されることが明らかになっています。生産力は、MCX6シリーズにシフトすることになるでしょう。

インテルに関しては、ネットワークアダプターカード用チップセットの可用性が改善しました。しかし、全般に基板の部品、特にI350T2V2モデルについては、まだ入手が難しい状況です。品不足は第3四半期全体にわたり続き、第4四半期に緩和される可能性があると予想されています。それまでの間、価格、生産コストともに上昇するでしょう。

 

 

GPU

過剰在庫と需要低下による価格変化の誘発

消費者グレードのグラフィックカードやゲーミング用グラフィックカードの需要が低下したため、供給過剰になっています。市場が在庫消化に苦慮するなか、メーカーは既存の在庫品をなくすため正価を下げる可能性があります。この動きは、新しいシリーズ40xxのスムーズな市場導入を確実にすることにもなります。間もなくリリースが予定されているもう一つはNVIDIARTX 3090のハイエンドモデルで、既存モデルは新しいモデルが市場導入される段階で生産中止となるでしょう。このリリースは第3四半期に予定されており、低価格帯のバージョンがその後に続きます。

これと対照的に、AI(人工知能)およびデータセンターの顧客は、GPUに対する一貫したニーズを示しています。A100 40 GBに代わり導入された新しいA100 80 GBは、依然として高い需要を維持しています。 

 

 

ストレージ

インテル、間もなく人気の高いSSDシリーズのEOLを発表予定

インテルの人気の高いSSDシリーズの市場価格は、EOLステータスに近づく中で、現在水準を維持するものと思われます。このEOL通知で影響を受ける部品は、以下の通りです。

S4510

S4610

S4520

S4620

インテルは、第3四半期中にNVMeモデルのコストを35%低下させるでしょう。これにより、特に1.92 TB以上の大容量の需要が改善されました。SATA SSDの価格は、従来通り変わりません。

他の大手SSDメーカーも、エンタープライズSSDの価格を引き下げる意向です。サムスン(Samsung)とマイクロン(Micron)では需要の低下が見られ、価格に影響が出るでしょう。サムスンについては、全体で8%の低下が予想されています。さらに、1 TB以下の小容量Solidigm SATA SSDの品不足が続いており、第3四半期のアロケーションは引き続き制限されるでしょう。

 

 

IC

サムスンの最新ナノシート製造テクノロジーによる競争激化

5nm市場の「軍拡競争」では、すでにTSMCが勝利を収めたものの、サムスンはナノシートの最新テクノロジーを使い、3nmプロセステクノロジーの市場を独占しようとしています。サムスンはFinFETの性能の限界を打破し、2Dチッププロセスを5nmと7nmから3nmにシフトさせて、より高度なイノベーションを提供することが予想されます。

各々のチップは、より高い電力効率と性能を備えたものとなります。サムスンのチップは、このナノシートテクノロジーによりGAA分野で比類のないものとなり、拡大する顧客のニーズを満たすためのより高いパフォーマンスをサポートする幅広いチャネルを備えています。

3nmチップの進歩は目覚ましいものの、現時点では、5nmチップに取って代わることはできません。現在、市場はまだこの新しいプロセスを認識しつつある段階にあるため、3nmの市場規模は小さいです。

サムスンはハイエンドのスマートエレクトロニクスなどの需要低下を避けるため、ファウンドリ製造の経営を置き換えることにより将来を見据えています。サムスンは、これらの技術改革を通し、より高いレベルでTSMCおよびインテルと競合することを目指しています。

 

停電による製造の一時停止

マイクロン(Micron)の広島DRAM工場は、停電のため製造が一時中止されました。同工場は1-ベータDRAMチップ(大半はDDR4用)を製造し、ハイエンドのスマートフォンその他の高性能ポータブルデバイスなどの最終製品を対象に供給を行っています。同じくルネサス(Renesas)も、落雷のため熊本市の工場が短期間閉鎖されました。この工場はルネサスのMCUの大半を製造していますが、7月11日には製造機能が全面復旧され、遅れは1週間分の業務に抑えられたと報道されています。

 

東芝のIC部品のリードタイムは2年以上に長期化

東芝の光アイソレータ(TLPシリーズ)とICドライバー(TCシリーズ)の品不足は深刻な状態で、平均6~9か月のリードタイムを見込むディストリビューターもあります。最も大きな影響を被ったシリーズは、納品が2年以上先となっています。同じくリニアテクノロジー(Linear Technology)とルネサス(Renesas)でも、リードタイムが長期化し、市場価格の上昇が見られます。ルネサスのR5とR7シリーズのリードタイムは現在、少なくとも52週間となっています。

一方、アナログデバイス(Analog Devices)のADUMシリーズについては、認定ディストリビューターがアロケーションをリリースしているため、市場における供給圧力は緩和されつつあります。STMicroも、MosfetsとDiodesのリードタイムは約6か月から1年と安定しており、ディストリビューターは深刻な納品不履行が発生するとは予想していません。

 

品不足と経済的圧力がもたらす予測生産量の縮小と価格上昇

原料不足によりSTMicroの生産コストが上昇し続けているため、価格が上昇しています。このような品不足に加え、インフレや世界的な景気低迷の影響もあり、STMicroは家電部門やモバイル部門の予測生産量を縮小し始めました。

このような要因は、特にSTMicro MosfetsおよびDiodesの生産コストに影響を及ぼしているため、価格が上昇する可能性があります。ビシェイ(Vishay)の高電圧MOSFET(IRF-xxxシリーズ)および自動車グレードのアイテム(SQ-xxxシリーズ)はメーカーの厳しい在庫アロケーションの下にあり、向う1年間は緩和があまり期待できない状態です。

逆にサムスン(Samsung)、マイクロン(Micron)その他のフランチャイズのディストリビューターは以前からのブッキングがあるため、高水準の在庫ストックと生産量を確保しています。パソコンやノートパソコンなどのコンピューター製品は、データセンターや顧客が充分な供給を受けているため需要が減っており、現在は下降傾向にあります。そのため、DDR4、LPDDRおよびeMMCの価格低下が予想されます。