中国における目下のロックダウンについて
中国では3月に、新型コロナ感染症の新たな大流行の波が一部の地域を襲いました。それを受けて、政府は厳格なロックダウンを命じました。製造業界では、限られた労働力で操業を続けるメーカーもあれば、完全に生産中止に追い込まれたところもあります。
以下は、影響を受けたメーカーの一覧です。
メーカー |
影響度 |
モレックス(Molex LLC) |
上海市と昆山市の厳格なロックダウン対策で同社工場の操業に影響。全体として、コロナ禍により地方のサプライチェーンが大打撃を受け、その悪影響が操業やロジスティクス全般に徐々に広がる。同社では供給に混乱が生じ、予定納期に遅延が出ている。 |
ビシェイ・インターテクノロジー(Vishay Intertechnology) |
上海工場が3月28日に操業停止となり、徐々に全面復帰を目指している。現在は3割の人員で操業。 ロックダウンの直前にMOSFET、自動車、LVM、HVLの全パッケージを値上げした。 |
テスラ(Tesla Inc.) |
上海全市のロックダウンで生産を中止したが、現在は操業を再開している。ただし、上海ギガファクトリーの能力は限られ、目標日産台数2,600台に対し、現状は1,200台に留まる。 |
インフィニオン・テクノロジー(Infineon Technologies) |
上海浦東地区の同社流通センターでは、資材調達と完成品に遅延が生じている。 |
アップル(Apple Inc.) |
サプライヤーの半数が上海市内と近郊にあるため、コロナ禍による操業停止の影響を受けている。ペガトロン(Pegatron Corp.)もその内の1社で、アップルのiPhoneの組立のほか、ディスプレイ、プリント基板、熱部品、電池、音響部品などの製造を担当している。 |
オンセミ(onsemi) |
中国にある同社のグローバル流通センターは、現地のコロナ防止対策により、4月に操業停止に追い込まれた。深圳・蘇州・楽山にある各工場の操業停止で、生産拠点をシンガポールとマニラに移した。しかし、大量の需要に応えられるまでには至らず、顧客へのリードタイムに遅れが出ている。 需要が供給量を上回っているため、操業状態は依然不安定である。 |
STマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics) |
ロックダウンにより、第1四半期に2週間分の生産が滞ったことが報告されている。 |
マイクロン(Micron) |
同社は、コロナ禍で生じた上海での制約により生産に支障が出ている旨の声明を出した。とりわけ、NOR型フラッシュメモリの組立と試験を担当する下請業者の生産ラインが、一時的に操業停止に追い込まれている。これによりマイクロンのサプライチェーンに連鎖反応が生じ、NOR型フラッシュメモリ製品全体でリードタイムの遅延と価格の上昇が見込まれる。MT25QU/MT25QLシリーズも例外ではない。 風説では、同社の予測生産量の90%に対して、生産スケジュールの見通しが立っていない。 |
インテル(Intel) |
大量の同社SSDが、上海の自由貿易圏で加工されている。ロックダウンの影響で、積送品が出荷できない状態にある。 |
リテルヒューズがロシアとの取引を全面停止
リテルヒューズ(Littelfuse)は、ロシアとのあらゆる取引を一時停止すると発表しました。これにより製品の販売はもとより、ロシアからの材料の仕入にも影響が生じることになります。
この決定で供給に影響を受ける製品は、以下のとおりです。
製品 |
シリーズ |
パッケージ |
ショットキーダイオード・ディスクリート |
DSA DSB DSS DSSK FUS |
全般 |
バイポーラ電源モジュール |
MCC MCD MDD MCR MCA MCK MDA MDK MDO
|
圧接モジュールパッケージ: 50 mm 60 mm 70 mm 77 mm |
ハイパワーサイリスタ |
Nシリーズ |
電極径パッケージ: 19 mm 25 mm 34 mm |
ルネサス、継続するサプライの停滞によってリードタイムと価格に影響
ルネサス(Renesas)は、コロナ禍によるロックダウンと地震による工場への影響から、操業の停滞を余儀なくされています。これによって遅延と価格の上昇が生じています。リードタイムは1年を超え、5月には全シリーズで値上げを実施。とりわけ、R5F523/RF5100/R5F101シリーズのリードタイムは50週を超えているほか、IntersilシリーズのCA3/DG4/ICL3/ISL12/ISL2に至っては78週に延びています。
インテル、5月からの値上げを顧客に通知
インテルは、全てのネットワークカードシリーズについて、5月から値上げを実施することを通知しました。ネットワークカードのリードタイムは、依然延びた状態が続いています。パーツの納品はアロケーションベースで行われているため、顧客は自由市場に不足分を求めざるを得ない状況に置かれています。目下の原材料不足で、同社の生産にも多大の影響が生じており、特にLOTGシリーズで顕著です。現在、市場価格は高止まりしており、近い将来に解決することは期待できそうにありません。
マイクロチップ、シリーズ全体でリードタイム遅延と価格上昇の見込み
原材料不足とTSMCの0.18ミクロン基板の撤退により、マイクロチップのアロケーションは依然厳しい状態にあります。特にモバイル機器やスマート電子機器業界向けのあらゆるコンポーネントで、生産全体への影響が顕著です。価格上昇もシリーズによって5~40%と違いがあるものの、総じて10%の値上げを実施しました。一方、リードタイムは現在も50週超で推移しています。風説では、製品受領を担保するため、顧客に1年前倒しの発注を要請しているということですが、正規販売代理店の話では、納品量は発注量の6割程度に留まっているということです。
STマイクロエレクトロニクス、生産・出荷の取組を変更
STマイクロエレクトロニクスは、第1四半期の減産に起因して、今期の出荷量を減らしています。全体的に、第2四半期は前期よりも25~35%出荷量が減り、さらに第3四半期には25~50%減となる見込みです。
同社のSTM8シリーズは25%の値上げが予想され、アロケーションは依然として厳しいものになっています。STM32Hシリーズも、同社のサプライチェーン変更の影響を受けており、生産の重点がSTM32F 1XXシリーズから移行したことで、顧客の手に届く可能性はほぼないか、あるいは全くない状態です。
地域紛争でセラミックコンデンサとMLCCのリードタイムに影響
東ヨーロッパにおける緊張の高まりを受け、第2四半期全般を通じて、原材料や不活性ガスの価格に影響が及び、MLCCの供給が懸念材料となっています。半導体製造に必要な材料の中でも、これまで特にニッケル・銅・パラジウム・ネオンに影響が出ています。主なMLCC材料は全て値上げの対象であるため、生産原価や市場での可用性に直接の影響が出ることになります。MLCCの85%程度はニッケルで、パラジウムが15%を占めています。
コストの上昇が見込まれるため、アロケーションは厳しくなりそうです。ヤゲオとケメットのタンタル製品やポリマー製品は現在、リードタイムが54週ですが、徐々に長くなっています。ビシェイのタンタルコンデンサについては、リードタイムは発注から82週です。TDKとムラタのリードタイムは26週ですが、ロシアとウクライナの戦争で主要材料の供給が不安定になっているため、延びることが予想されています。
ビシェイ、自動車部品を値上げ
ビシェイは、基板レベルの全コンポーネントで値上げを実施しました。特にSQおよびSQJ自動車シリーズが品薄で、リードタイムは1年を超えています(99週以上)。中国にあるビシェイのMOSFET工場がコロナ禍によるロックダウンの影響を受けているため、状況はますます悪化しています。
同社の生産も、工場の労力不足や補給の制限による影響を受けています。逼迫の主因は、組立にMOSFETが欠かせない電気自動車の需要が増えていることが挙げられます。不足は2022年を通じて続くため、リードタイムが長引くリスクを極力抑えるため、顧客は十分前倒しで発注するよう忠言されています。
ベンダーの在庫削減でDIMM価格が値下がりの見込み
PC用DIMMの公式価格は、今後も4~7%下落し、サーバ用DIMMも2~3%のダウンが見込まれています。ベンダーが損失覚悟で在庫を減らしているため、今後数か月間、総じて需要の低下が予想されます。
インテルとAMDの新CPUシリーズ(Sapphire Rapids/Genoa)の発売は第4四半期にずれ込むため、これらCPUへの主な対応部品は徐々に発売されるでしょう。ベンダー各社によれば、顧客の多くはまだNPI試験段階にあり、それが今しばらくは続くということです。最後に、新しいDDR5モジュールは、DDR4モジュールよりも価格が20~30%ほど高くなると見ています。
ストレージ
大手SSD全社が世界的なインフレ下に
あらゆるSSDブランドで値上げが続いていますが、その主因は世界的なインフレです。SSDの大手メーカーであるインテル、サムスン、マイクロンも5~13%の値上げに踏み切りました。現下のIC不足により、組立ライン全体でサポートが制限され、SSDサプライチェーンの足かせとなっています。
インテルとAMDのサーバCPUをめぐる見通し - 市場競争の続行
インテルもAMDもサーバ向けに新型CPUを発表していますが、サプライチェーンの中断によって、発売は第3四半期または第4四半期にずれ込む見通しです。インテルのSapphire RapidとAMDのGenoaは、供給が滞る可能性があり、顧客への提供は逼迫しそうです。その結果、主にサーバメーカーが代替選択肢の採用を迫られ、既存製品としてインテルのIce LakeやCascade Lakeシリーズ、AMDのRomeやMilanシリーズを買うことになるでしょう。
インテルとAMDは、深圳や上海の強制ロックダウンの影響を被った数多くのメーカーの一つです。供給数量にばらつきが出るとしても、顧客にとって長期的な救済策はほぼないと言える状況になっています。
インテルのイーサネットコントローラ/チップセット全般で供給不足と値上げの見通し
インテルのイーサネットコントローラ/チップセットへの高い需要度は6月も続伸しますが、アロケーションは限られています。第2四半期全体を通じて、同社のサポート供給能力は限界に達しており、第1四半期からの持ち越し需要は2割しか満たすことができませんでした。供給の制約やアロケーションの限界に加えて、イーサネットコントローラは10~20%の値上がりが見込まれています。
値上げの影響が及ぶのは、以下のシリーズです。
ロジスティクス原価や資材原価の上昇に加えて、国際的なサプライチェーン全体での深刻な物不足により、メーカーの段階的値上げが近年ますます一般的になっています。
今年のGPU市場は、昨年に比べてはるかにエンドユーザーフレンドリーになっています。GPUメーカーは、上海のロックダウンで中国からの出荷能力に打撃を受けましたが、価格は続落しています。暗号通貨の空間がGPUの消費を大幅に減少させ、価格も続落の中にあります。需要の増加が見られるのは、地方のPC DIY小売店向けです。全体として、ティア1のGPUメーカーは、価格を5%ほど下げています。
アダプタカードメーカーの中でメラノックスがサプライチェーンの圧力を受ける
メラノックス(Mellanox)は、NIC製品全体において値上げを控える傾向にありますが、それでも僅かずつ価格を上げています。ただし、能力上の制約と高い需要に起因する大きな供給上の格差から、25~30%の値上げも予想される状況にあります。これまで戦略的価格調整を行ってきたにもかかわらず、製造ライン全体でのサポート不足が、同社の補給線についに悪影響を及ぼし始めたと言えるでしょう。
受注残を抱えているため、エンドユーザーは他社のアダプタカードを探さざるを得ない状況です。しかし残念ながら、他のアダプタカードメーカーであるインテルやブロードコムでも、同様の深刻な補給問題を抱えています。メラノックスでは、制約の結果として、また平均リードタイムが32週を超えることから、MCX-6が適切な選択肢にはならず、レガシーなMCX-4とMCX-5のラインをフル稼働させてきました。
ラズベリーパイのユニットに深刻な制約
ラズベリーパイ(Raspberry Pi)では、目下のサプライチェーンの混乱を受けて生産に影響が及び、全てのユニットに深刻な受注残が生じています。優先度をコンシューマ部品から商用・業務用部品に変えても、供給配分への影響は今後も続きます。生産上の制約に加えて、消費者向けの在庫を転売しようとするボット(自動注文プログラム)の存在があることから、補給・販売管理を再評価して現状を打開する必要があります。
このようなサプライチェーンの混乱のさなかにあって、ラズベリーパイ4モデルの品薄状態は、2023年4月まで続くものと予想されます。