すべての主要サプライヤーが偶発的なサプライチェーンの混乱の影響を受ける
グローバルサプライチェーンは四半期ごとに連続的な混乱に見舞われています。直近では、2022年の第1四半期に日本で起きた2つの地震が国内のさまざまなメーカーに影響を与えました。アジアの主要ハブは新型コロナウイルス感染症の急増により操業の停止を余儀なくされ、ロシアがウクライナに侵攻して戦争を誘発し、域内のサプライチェーンリソースが断絶しました。
その結果、グローバルサプライチェーンにおいてサプライヤーの在庫増や価格高騰、リードタイムの長期化が生じています。
大規模な供給不足によるIC生産への影響が続く
大手集積回路(IC)サプライヤーは需要の高まりを受け、自動車関連の受注を優先しています。しかし、工場の人手不足や原材料不足など、深刻な供給不足が生産ラインを圧迫しています。影響を受ける部品として、STMicroelectronics、Infineon、MicrochipのパワーマネージメントおよびアナログIC、アナログ信号変換器、MOSFETなどが挙げられます。Infineonのリードタイムは、平均48週間から60週間に増加しました。
STMicroelectronicsの納品は2022年第4四半期以降になる見込み
第2四半期、STMicroは4月以降の全製品ラインの15%値上げを発表しました。これにより、原材料、エネルギーおよび物流のコストの高騰で既存の在庫に支障をきたしています。
さらに5月には、生産終了となるSTM8(8ビット)MCUシリーズが25~30%の追加値上げを予定しています。同シリーズは第3四半期までに生産を終了し、STM32(32ビット)シリーズが代替品となります。ただし、STM32は納期遅延の影響を受けており、顧客は同部品を搭載するための基板設計のやり直しが必要になります。すべてのシリーズの納品は、2022年第4四半期または2023年第1四半期に延期されます。
マイクロチップ、全製品の値上げを実施
マイクロチップは、5~40%までの幅広い値上げを軒並み実施し、平均10%の値上げとなりました。現在のリードタイムは最大50週で、新規の注文については1年間の納期でNCNR(キャンセル不可および返品不可)となっています。マイクロチップの推奨サプライヤープログラムに参加しても全配分が保証されない事例が多数あり、その不足分は50%にも上ると報告されています。このことから、プログラムに参加しない場合の供給ギャップはさらに大きくなるといえるでしょう。
Vishay Intertechnologyのリードタイムが1年以上に及ぶ
中国上海にあるVishayの2つの工場では、新型コロナウイルス感染症による強制的なロックダウンと労働力の制限により、操業に影響が出ています。影響が出ているのは、MOSFET製造工場とダイオードを製造する小規模工場です。
Vishayの物流および選別工場における隔離制限はMOSFETとダイオードの製造に影響を及ぼし、顧客の受注を妨げています。このため、4月中まで供給ギャップが生じることが見込まれています。
現在、車載MOSFETのリードタイムは75週で生産量の割り当てが困難となっています。最も顕著な影響を受けているのがSI943シリーズです。標準抵抗器のリードタイムは現在、最大100週(CRCWシリーズ)に達しています。薄膜抵抗器のリードタイムは50~80週、シャント抵抗器のリードタイムは最大80週です。
ルネサス エレクトロニクスの日本工場、地震による長期的な影響に直面
日本国内の3つの工場は、第1四半期に発生した2つの地震の影響を受けました。被害状況を把握するために操業を停止したことに起因する生産の遅れにより、生産量に支障をきたしています。3月16日に発生した地震の震源地近くにある3つの工場は、那珂工場、高崎工場、米沢工場です。
その後、すべての工場が操業を再開していますが、地震の影響は少なからずあります。那珂工場では、生産中であった仕掛品について一部で破損が発生しました。仕掛品の破棄や減産による損失は、200mm(8”)ウェーハー製造ラインで約2週間分、300mm(12”)ウェーハー製造ラインで約3週間分となっています。
生産損失について、高崎工場は10日程度の生産量、米沢工場は2日分の生産量に相当します。
オンセミの製造能力、2022年に向けてピークに達する
オンセミのリードタイムは50週を超える状態が続いており、2022年に製造能力が最大となる中、改善の兆しはありません。また現在、米国とEMEAの顧客を優先しているため、生産量の割り当てレベルも引き続き厳しくなっています。原材料価格の上昇が続いていることから、第2四半期も価格上昇が予期されます。
既存の遅延に加え、オンセミは顧客の保護を目的とする「シップ・アンド・デビット」イニシアチブにおいて、顧客に他の何千ものクレームに加えて割り当ての承認も求めています。ただし、人手を多く要するこのプロセスは更なる課題を引き起こしており、全シリーズに影響を及ぼしています。
一次冷却材サプライヤーが生産工場を閉鎖
現地の環境規制強化に伴い、3Mはベルギーの半導体冷却材工場を無期限で閉鎖しました。この工場は、チップ製造工程の1つであるエッチングに使用される冷却水の世界供給量の80%以上を占めています。
この措置は3月8日に実施され、3Mは3月18日にサムスン電子、SKハイニックス、TSMC、インテルなどの顧客に対して公式通知を送りました。この閉鎖は市場に直ちに影響を及ぼすことはないものの、メーカーは代替品を探す必要があり、冷却材の現在の在庫は1~3年の寿命と推定されます。
第2四半期に複数のメーカーがSSDを値上げ
第2四半期にSSDの値上げを推し進める要因となったのは、電源管理ICコントローラ不足です。大手ブランドはSSDの価格を5~10%値上げしています。この中にはサムスン、インテル、マイクロンも含まれます。
インテルとSSD事業のSolidigm、上海封鎖で生産に負担
Solidigmは、市場の混乱の可能性を減らすために、第2四半期と第3四半期を通してインテルの販売チャネルを使い続けていますが、インテルとSolidigmの両シリーズは、生産上の制約を受けています。
以下のIntel SSDラインは引き続き不足しています。
小容量のSSD(Intel 240GBと480GB)も極端に不足しています。
生産リソースはNVMeに集中していますが、メーカーがTier 1 OEMへの納入に注力しているため、SSDの顧客にとって市場の在庫は厳しく、価格も上昇しています。
また、以下のIntel/SolidigmシリーズにEOL(生産終了)通知が影響を及ぼす見込みです。
一部の部品は制限が多く、上海の労働節(5月1日)以降に発売される予定です。小容量SSDおよび大容量SSDが影響を受けます。
ハードドライブメーカー、物流コスト上昇と制裁を乗り切る
ロシア・ウクライナ戦争に伴う制裁措置による原材料の不足と物流コストの上昇が、ハードディスクドライブ(HDD)価格に影響を与えています。第2四半期には、シーゲイトが3~4%、ウェスタンデジタルが5%のHDDの値上げを実施しました。価格が上昇する一方で、需要が鈍化しているため、欧州のベンダーでは過剰在庫となるケースもあります。
1TBは生産終了を通知し、2TBは供給制約を受けるなど、低容量HDDの供給が制限されています。ただし、6TBや18TBなどの大容量HDDの供給はここ数か月で改善し、顧客にとって入手可能性は高まっています。
メラノックスの需要が供給を上回る
メラノックス製品の平均リードタイムは需要が供給を上回っているため、36週間と高い水準で推移しています。需要が高水準で推移しているため、MCX-6、MCX-5、MCX-4シリーズは供給ギャップが深刻化しており、顧客の選択肢は限られ、製品価格も高騰しています。4月以降、メラノックスは価格を25%引き上げ、生産制約によりリードタイムは1年以上に伸びています。
インテルのサーバーCPUの価格および供給が世界的な出来事の影響を受ける
新型コロナウイルスによる政府のロックダウンにより3月に深圳工場が操業を停止し、インテルのサーバー用CPUの価格は顕著に値下がりしました。これは、ベンダーが既存のIntel Cascade LakeおよびCascade Lake Refreshの供給在庫を積極的に減らしたためだと思われます。
2つのサーバーCPUシリーズは厳しい制約を受けていますが、これはロシア・ウクライナ戦争を背景とした追加制裁により、第2四半期まで継続するとみられます。米国をはじめとする各国は、ロシアからの民生用電子機器、航空機部品、半導体などの輸出を阻止するために制裁を発動しています。
インテルのイーサネットコントローラとチップセット、大幅な製品シフトを実施
インテルは、メーカーの製品ラインにおいて低価値部品であるイーサネットコントローラおよびチップセットの製造を優先していません。 既存のインテル イーサネットコントローラとチップセットは、TSCM社が製造する旧式の技術である45NMテクノロジーを用いています。
旧シリーズの生産量の最小化に伴い、顧客は最新のイーサネットコントローラのI225シリーズへの移行を積極的に進めています。ただし、最新のイーサネットコントローラI225シリーズは先行品とピン間接続ができないため、顧客はマザーボードの再設計が必要となり、移行には時間がかかると思われます。顧客が旧シリーズから移行するには6か月ほどかかるとみられています。
インテルは、以下のイーサネットコントローラ/チップセットシリーズのサポート終了を発表しました。
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· 82574Lギガビット・イーサネットコントローラ · 82574ITギガビット・イーサネットコントローラ · 82583Vギガビット・イーサネットコントローラ
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· 82579Vギガビット・イーサネットPHY · 82579LMギガビット・イーサネットPHY |
また、以下の製品変更通知が様々なインテルのイーサネットコントローラにおいて実施されました。
注文のキャンセル・返品は次の日付の翌日以降無効となります:2021年1月31日
最終生産終了発送日:2022年12月31日
製品コード |
S SPEC |
MM# |
推奨代替商品コード |
S SPEC |
MM# |
WG82574L |
SLBA8 |
898552 |
WGI210AT |
SLJXQ |
925131 |
WG82574L |
SLBA9 |
898553 |
WGI210AT |
SLJXR |
925132 |
WG82574IT |
SLBAB |
898555 |
WGI210IT |
SLJXS |
925133 |
WG82574IT |
SLBAC |
898556 |
WGI210IT |
SLJXT |
925138 |
WG82583V |
SLGVC |
903008 |
WGI211AT |
SLJXY |
925144 |
WG82583V |
SLGVD |
903072 |
WGI211AT |
SLJXZ |
925145 |
注文のキャンセル・返品は次の日付の翌日以降無効となります:2022年4月22日
最終生産終了発送日:2022年10月22日
製品コード |
S SPEC |
MM# |
推奨代替商品コード |
S SPEC |
MM# |
WGI211AT |
SLJXY |
925144 |
WGI210AT |
SLJXQ |
925131 |
|
|
|
KTI225LM |
SLNNJ |
99A57P |
|
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|
KTI226-LM |
SRKTT |
99AFMX |
WGI211AT |
SLJXZ |
925145 |
WGI210AT |
SLJXR |
925132 |
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|
|
KTI225LM |
SLNNH |
99A57N |
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|
KTI226-LM |
SRKTS |
99AFMW |
注文のキャンセル・返品は次の日付の翌日以降無効となります:2022年1月22日
最終生産終了発送日:2022年4月22日
製品コード |
S SPEC |
MM# |
推奨代替商品コード |
S SPEC |
MM# |
NHI350BT2 |
SLJ3Y |
915804 |
NHI350AM2 |
SLJ3S |
915801 |
NHI350BT2 |
SLJ3X |
915811 |
NHI350AM2 |
SLJ3R |
915809 |
WGI210AS |
SLJXU |
925139 |
WGI210IS |
SLJXW |
925142 |
WGI210AS |
SLJXV |
925141 |
WGI210IS |
SLJXX |
925143 |
生産終了製品の注文は次の期日の翌日以降キャンセル不可になります:2022年4月30日
最終生産終了発送日:2022年9月30日
プラットフォーム |
製品コード |
S SPEC |
MM# |
モバイル |
WG82579LM |
SLHA5 |
909805 |
WG82579LM |
SLHA6 |
909806 |
|
WG82579V |
SLHA7 |
909807 |
|
WG82579V |
SLHA8 |
909808 |
間もなくEOLとなるシリーズのオープンマーケットでの動きは活発で、入手可能な製品の価格は徐々に上昇しています。
ロシア・ウクライナ戦争による規制を理由にGPUの出荷が制限される
ロシアからのGPU需要は制裁により停止しています。その結果、サプライヤーは出荷できない在庫を抱えています。
中国の上海と広東省における新型コロナウイルスのロックダウンにより製造に支障が出ているため、GPUの生産能力の改善は望めそうにありません。
米国が中国から輸入するグラフィックカードの関税を一時的に撤廃
米国が関税を撤廃した結果、GPUの価格は10~15%下がると予想されています。既存の関税が除外される部品には、PC用グラフィックカード、マザーボード、その他のハイグレードGPUが含まれます。除外対象は、2021年10月から2022年12月までの輸入品に適用されると報じられています。
EEPROM不足がトランシーバーの生産に影響
EEPROMプログラマブルメモリ部品の不足は、トランシーバーの生産に影響を及ぼしています。中国市場でトランシーバーの需要が急増していますが、限られた原材料、労働力の不足、EEPROMの生産不足により納期が遅延しています。EEPROM、マイクロチップ、STMicro、NXPのリードタイムは52週に達し、供給ギャップが予測されます。
トランシーバーメーカーであるフィニサーは、光通信部品やサブシステムの製造にEEPROMが欠かせません。しかしながら、EEPROM不足によりリードタイムが長期化し、30週間を超えています。85xxシリーズ8574と8536の部品が制約の影響を受けています。アジアやその他の地域でも、限定的な供給がより広範に行われるようになることで、デコミットが予想されます。