IC市場にくすぶり続ける問題
現在、業界全体にまたがって発生している供給の制約によって全体的な集積回路(IC)のリードタイムがこれまでになく長期化を呈しており、 特にさまざまな自動車グレードICおよび産業グレードICで最大70週まで長期化しています。契約した数のICを確保できない状態に陥っている代理店も出ており、一部の部品は納品が2023年以降になると報道されています。
TSMCの1,000億ドルの成長計画
台湾積体電路製造(TSMC)の生産能力は2022年を通して厳しいと予想されています。しかし部品の需要が続いている只中にあり、今後3年間で1,000億ドルの投資を実施し 日本と米国に1拠点ずつを予定している新たな生産工場に振り向け、現在の状況を打開しシリコンウェハー事業の生産能力を増やす計画です。
これに先立ってTSMCは、十分に実証された高度プロセスノードのコストをすでに10〜20%増加させています。また、ファウンドリコストの増加によってCPU、GPU、ASICSの取引価格に影響が出ると予想されています。AMD、インテル、NvidiaはTSMCの高度ノード技術への依存度が大きいメーカーである、とTech Wire Asiaは伝えています。
ブロードコムは値上げを継続
ブロードコムは、主にウェハーに発生している問題および供給不足が原因で BCMシリーズの価格を昨年中に2度にわたり最大で20%引き上げましたが、 さらに費用対効果が高い生産計画を具現化するべくこの2度にわたる価格の値上げを契機として、新シリーズへの切り替えを顧客に促しました。このようなビジネスの手段は生産工場側で最新技術を取り入れることを可能にするため、生産効率の向上を見込むことができます。
また、この価格戦略はブロードコムの製品すべてに適用されるため、サプライチェーンを細粒化しリードタイムの短縮につなげることができます。ブロードコムのBCMシリーズのリードタイムは現在54週となっています。
NXPの自動車部品の不足が続き、さらなる価格上昇を招く
NXPは、同社の自動車部品の価格を20%値上げしました。また、2022年6月を目途にさらに30%の値上げを予定しています。
NXP天津は同社が中国に構える生産工場であり、主にMCIMXシリーズMCUを扱っていますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によって政府主導で行われた最近の都市封鎖の影響を被っています。これによって自動車部品のリードタイムは、現在の52週間を上回る可能性があります。
ボッシュのセンサーのリードタイム長期化 – 顧客へのサポートをほとんど見込めず
ボッシュのセンサーのリードタイムが長期化する兆候を見せており、特にスマートフォンやウェアラブルデバイス向けに最適化された低消費電力アプリケーションのセンサーに影響が出始めています。現在の見計らい注文(Open Order)にはボッシュからのサポートがありません。BMA253、BMA400、BMA456、BMA422の各シリーズが影響を受けています。
アナログ・デバイゼズによるマキシム・インテグレーテッド買収の遅れがリードタイムに影響
アナログ・デバイゼズ(ADI)のMEMセンサーのリードタイムは現在60週ですが、取引価格は安定しています。
Maximの部品は90週まで、DSシリーズでは70週までリードタイムが伸びています。
また、アジアでは中国の旧正月の期間中(2月1日~10日)に工場の稼働が制限されましたが、それ以降も生産遅延が尾を引くとみられています。一連の生産に遅延が見込まれているだけでなく、一部の部品のビルドをサポートするウェハーの出荷に制限があることも供給制約の一端となるでしょう。
ザイリンクス、Tier 1顧客に重点を置く
ザイリンクスの生産能力は危機的な状況にあり、改善の兆しが一向に見えないため、 同社はサポート先をシフトし世界中のTier 1顧客に重点を置くようになりました。航空宇宙、防衛、米国政府はサポートを確保しています。これに加えて現時点で新規の受注を中止しており、かねてから市場が不安定な中で2022年の受注残の行方は不確かなままです。
村田製作所のグローバル流通が混乱の影響を軽減
村田製作所の生産能力は各地に拠点を構える工場の間で分散されており、 福井県の武生工場で最近発生した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の集団感染のような混乱が一拠点で発生しても操業混乱のリスクを低く抑えます。実際にハイエンド民生用MLCCに関する村田製作所の生産高の20.7%を武生工場が担っていますが、 コロナの集団発生で一部の生産ラインが一時停止に追い込まれながらも短期的にみると操業全体に与えた影響は限定的でした。
その一方で、効果的な対策を講じていても同社の生産能力の完全な回復には依然としてほど遠いと言わざるをえず、 新規の受注中止やリードタイムのさらなる長期化の回避には至っていません。
メモリー
パーツの不足がDDR5メモリーモジュール生産に影響を及ぼす
1月以来、DDR5メモリーモジュールの需要が高まっています。しかし、DDR5のメーカーは完全な生産体制を整えることが未だできておらず、DDR5などの次世代メモリーモジュールの供給は限定的で、 生産および流通も厳しい状態にあるためオープンマーケットにおける取引価格が30-40%以上上昇するという結果を招いています。報道によると、DDR5ビルドに必要なPMICおよびVRMコンポーネントの不足によって供給の実現可能性を削いでしまう可能性もありそうです。
インテルのSSDの顧客に対する慎重な見通し
供給が厳しい状況にあって小容量240GB/480GB SSDの市場価格は高止まりを続けているため、 メーカー各社はインテルのP4510およびP4610シリーズといった特定のSSDシリーズを顧客に割り当てることができなくなっています。
これとは別にインテルは、高い需要があるにもかかわらず、S4510 M.2 240GBおよび480GB SSDの生産を取りやめ段階的に廃止にすることを発表しました。これにともない、インテルはTier 1顧客からの発注のみ受けることになります。
マイクロン、欠品が続く9300 Max SSDを生産中止
マイクロンは、部品不足が一向に改善しないため、 2022年半ばの出荷を最後にハイエンド9300 MaxシリーズSSDの生産を中止するとみられています。本シリーズの代替モデルにはインテルのP4610およびサムスン電子のPM172bがありますが、どちらも供給が不足しています。
2022年第1四半期、ハードディスクドライブの需要が増加
現在、中国におけるHDDの需要が上昇傾向にあります。 主要なHDDメーカーであるSeagate、Western Digital(WD)、Hitachi(日立製作所)の8TB SATA HDDは、1月にもっとも販売された製品でした。一方でOEMメーカー各社は、8TB容量のHDDの供給が不安定になっており、Seagateのリードタイムが16週間から18週間に長期化していると報告しています。
AMDの顧客の間に広まる今後の値上げ予想
AMDがEPYCデータセンタープロセッサの製品ラインすべてで10-30%の値上げに踏み切った、と報道されています。ただし、実際の価格設定は顧客に応じて幅があります。しかし同社は操業上の後退に直面しており、同社の外注先に高く依存することでウェハーの生産能力およびパッケージング能力を確保してきたことがマイナスに寄与し、 AMDのCPU製品すべてに見られる値上げや不透明な納品期日を引き起こしています。
インテルのイーサネット・チップセット 最新情報
210IS、210IT、210ATの各チップセットをはじめとするインテルのイーサネット・チップシリーズの価格が再調整されたことからも明らかですが、 ファウンドリの価格上昇(工場での生産価格の上昇)がイーサネット・チップセットの価格上昇につながっています。
影響があるインテルのシリーズ:
WGI210IT |
WGI210AT |
WGI210IS |
WGI211AT |
WGI219LM |
FTXL710-BM1 |
FTXL710-BM2 |
FTX710-BM2 |
中国の旧正月後もNvidiaのGPUの入手可能性(可用性)は厳しい見込み
NvidiaのRTX 3070/3070Ti/3080/3080Ti/3090をはじめとするGeForceシリーズは供給不足が続いています。その一方で、RTX 3090Tiの在庫が多くあると報告しているサプライヤーも一部に存在します。RTX 3090 Tiは、本来であれば中国の旧正月に先立ってリリースされるとみられていた高需要のGPUですが、供給は引き続き厳しい状況にあります。
NVIDIAは、「入門レベル」のRTX 3050をローンチし、2022年1月末から出荷を開始すると発表して世間を驚かせました。
完成品
メラノックス社の供給制約がさまざまな完成品に波及
メラノックスのリードタイムが2023年まで長期化しており、これによってメラノックスの生産ラインにも制約が発生しています。中でもネットワークカード・シリーズの供給に端を発する問題は今後も尾を引くと見通されているため、
OEMメーカーや中国の他企業はメラノックスの代わりにインテルやブロードコムのネットワークカードに移行しているようです。