ストレージおよびメモリ市場の需要は引き続き軟調
メモリ市場とストレージ市場では、顧客にとってはコスト削減の機会にもかかわらず、需要が低下する傾向が続いています。大方の見方を考慮すると、メモリ市場における需要の低下は少なくとも2023年第2四半期まで続く可能性があります。
多くの顧客が出荷を中止したり遅らせたりしているものの、オープンマーケットにおける供給は依然として健全さが見受けられます。メモリモジュールの公式な価格設定は過去3か月間に一貫して8%~12%のペースで下落していますが、オープンマーケットの価格設定はより不安定で、ほぼ毎日変化しています。多くのディストリビューターは引き続き、価格設定が悪化するリスクを軽減するため、メーカーからのバック・ツー・バック・パーチェス(取引リスクをメーカーに転嫁する条件での購入)に基づいて発注しています。
ストレージ市場では、クライアントストレージの需要がサーバーストレージの需要よりもさらに鈍く、販売会社はラップトップストレージの需要が急激に低下していると述べています。そのため販売会社は過剰在庫を処分し、赤字での取引を余儀なくされています。
さらに、インテルの小容量SSDへの需要も同様に低調で、注文の大半でコスト削減機会が生まれています。市場での価格設定は15%〜20%のペースで漸進的に低下しています。内部システムをインテルからSolidigmに移行したため、インテルのシステム内でダウンタイムが発生しており、それが原因で将来的に遅延が発生する可能性があります。
また、生産が終了したSamsung PM883シリーズにはスポット需要があり、特定の容量の価格設定が上昇しています。
Nvidiaの新しいRTX 4090は波風をはらんだ発売に
RTX 4090に対する顧客からの当初のレビューはほとんどが肯定的で、メーカーから販売会社への最初の割り当てはすぐに購入されました。しかしその後の需要に関しては、納品に関する確固とした確認が取れていません。納品の遅れはニュースで報じられているように過熱の問題に起因している可能性があり、Nvidiaは問題の特定と修正に取り組んでいるという見方があります。
その結果、顧客がRTX 4090に当初は関心を示したにもかかわらず、前世代のRTX 3080および3090、とりわけ空冷仕様の需要が継続しています。前の世代のモデルは、RTX 4090のより安価な代替品ですが、メーカーがこれらのモデルの注文をもはや受けなくなっているため、調達は困難です。Nvidiaが利益率の高さを理由にHopper H100 GPUの生産に注力しているとの見方があります。このことは、RTX 4090の需要が供給を上回った場合、この製品の入手可能性に影響を与えることが考えられます。
供給過剰により生産量を削減するメーカー、プロジェクト遅延も
メモリ需要が低下したことにより、消費者および生産者の両方で在庫が膨らんでいます。2021年第4四半期に始まった家電製品の需要の低下は、ロシア・ウクライナ戦争、パンデミック対策、物価上昇によって短期的には相殺されましたが、これらのイベントによる圧力が緩和されるにつれ、需要低下傾向が継続しています。
メーカーがこの状況を乗り切ろうとする中、一部のメーカーはDRAMおよびNANDフラッシュの生産量を削減すると発表しています。最初に削減すると表明したのはMicronですが、それに続いてすぐにKIOXIAがNANDの生産量を30%削減すると発表しました。NANDフラッシュは、主流容量のウェーハの平均契約価格が現金コストの水準にまで低下し、ほぼ赤字で販売されているため、この市場シナリオはDRAMと比べてはるかに悪化しています。
さらに、資金調達が難しくなり、需要の見通しが依然として弱いため、メモリメーカーは新年の新規生産への移行を先送りしています。代わりに、メモリメーカーは利益を確保するため、主力製品に注力しています。KIOXIAとMicronは176層と112層の製品に特化する計画です。
供給過剰となっている現在の市場では、DRAMの市場充足率は予測の11.6%から10%未満に低下すると予想されています。NANDフラッシュの市場充足率は10.1%から5.6%に低下する見通しです。したがって、価格の下落ペースは鈍化すると予想されており、減産によって供給過剰が制限されるため、2023年には在庫への圧力が緩和すると思われます。
自動車センサーの制約によりメーカーに不安定性のリスク
厳しい供給制約と管理手続きにより、ブローカーとの自動車用センサーの取引に制約が生じています。ディストリビューターは、場合によっては、対象の最終顧客に関する完全な知識と、エンドユーザーではない当事者に販売するための承認書が必要とされます。こうした状況は、需要に大きく遅れを取っている供給の改善を妨げています。現在、すべてのセンサーの標準的なリードタイムは52週間以上に長期化しています。
Analog Devicesは2つのカテゴリの自動車センサーを生産しており、その供給は深刻な影響を受けています。第1のカテゴリであるMEMS安全性およびセキュリティセンサーには、衝突検出、セキュリティ、および横滑り防止用の加速度計とジャイロスコープなどがあります。第2のカテゴリは、自動運転車の知覚センシングおよびナビゲーション用のセンサーです。加速度計とジャイロセンサーの大半はフィリピンの工場で組み立てとテストが行われており、ADXL1/2/3 xxxなど売れ筋シリーズのリードタイムは26〜52週間となっています。売れ行きが最も好調なシリーズであるADXL312、ADXL362、ADXL345のリードタイムは最大90週間となっています。
一方、STMicroの状況は着実に改善が見られますが、供給とリードタイムはまだ安定しておらず、リードタイムは依然として50週間を超え、割り当ては非常に制限されています。STMのMCUシリーズであるM4およびM7は依然として、ウェーハ不足の初期に始まった価格水準の高止まりと供給不足に直面しています。
M0およびM3シリーズの状況は安定し始めており、供給量はこの3週間で改善されています。また共通部品の市場でも在庫が減少し、価格は安定を見せ始めています。OEMおよびEMS顧客が市場在庫を減らす中、価格設定は大幅に改善されました。これは、第4四半期に需要が低下し、メーカーが割り当て分をすべて納品したためで、こうした状況はSTM32シリーズにとって重要な転機となっています。
さらに、STM8シリーズの供給は、工場の生産能力が縮小しているため、今後数か月でさらに影響を受けるとの見方があります。
Boschと村田製作所、市場をうまく乗り切るために計画を変更
MEMSテクノロジーの分野でリーダーとしての地位を確立しているBoschは、小型で信頼性が高く、手頃な価格のコンポーネントの代名詞となっています。これらのコンポーネントは世界中の主要な自動車顧客にとって必要不可欠な部品ですが、需要の高止まりによってリードタイムが長期化し、現在は26週間となっています。Boschは高まる顧客ニーズに応えるため、以下のアプリケーションに注力しています。
村田製作所もまた、現在の需給状況に適切に対応するため、生産とサプライチェーンに変更を加えています。具体的には、米国と中国の二国間の急激なデカップリングに対処するため、サプライチェーンを複製し、両国の市場にサービスを提供しています。現在、同社は主要な生産拠点を中国と日本に置いていますが、タイとベトナムに新工場を設立しようとしています。さらに同社はインドでの生産量を増やしています。
また、村田製作所にとって中国は様々なレアメタルの主要な調達先の一つです。同社はこうした調達の柔軟性を高めるため、サプライヤーのプールを広げようとしています。しかし、資源が不足しているため、この種のパートナーシップの確立には課題が多く、中国の資源への依存からの退出は困難です。
米国の輸出管理の影響を正確に把握するのは不可能ですが、村田製作所はメーカーが進むべき今後の本道を歩み始めている可能性があります。
PC市場は、11月11日の中国の「独身の日」の販促にもかかわらず、冷え込みが継続
AMDは、ダブルイレブン・イベントとしても知られる中国の11月11日「独身の日」のために、Ryzen 7000シリーズに新たに手頃な価格設定を適用しました。値下げ幅は23%〜27%の範囲で、インテルの第13世代 Raptor Lakeと直接競合する価格帯になるように設定されました。第12世代Alder Lakeと第13世代Raptor Lakeの販売数量は、第10世代Comet Lakeなど前の世代と比べて、まだ不足しています。
これらのコスト削減機会が顧客にもたらされているにもかかわらず、PC需要が低下し続けているため、今年のダブルイレブン・イベントの全体的な需要は昨年に比べて弱いものとなりました。こうした需要の低下に伴い、ディストリビューターは供給過剰を回避するため、インテル製品の販売予測に緩衝在庫を加えようとはしていません。
需要の下振れはオープンマーケットにも影響を及ぼしており、工場から納入される製品が過剰在庫となっています。特に、インテルのイーサネットチップセットは、供給された製品の入手がより容易になるにつれて、オープンマーケットでの価格設定が直接取引の価格設定と一致しつつあります。巷間の見方では、供給過剰が続く状況は2023年下半期まで続く可能性があります。現時点でも、数多くのコスト削減機会が明らかになっています。
現在の市況が継続または悪化した場合、インフレ率の上昇と相まって、影響を受けるメーカーやOEMが解雇や雇用凍結または賃金引き下げに踏み切る可能性があります。
インテルとAMDによるコスト削減機会の長期継続は望み薄
最近、Intel Sapphire Rapid Xeon CPUの発売が2023年第1四半期まで先送りされたと報じられました。原因は、既に発売されているAMDの第4世代EPYC Genoaとの競合に起因する歩留まり率の悪さです。したがってSapphire Lakeが発売されると、前世代のCPUの特別な価格設定はすべて終了されるというのが大方の見方です。これは、最新の設計への移行を早めるためにインテルがこれまで取ってきた通常の措置であるからです。
AMD Zen 3 EPYC MilanからAMD Zen 4 EPYC Genoaに移行させるには、Genoaシリーズが下位互換性を持たないため、マザーボードを変更する必要があります。同じことがIntel Sapphire Rapidにも当てはまります。現在のところ、Intel Ice Lake CPUの採用率は数か月前と比べ、主にIce Lake 63XXおよび83XXシリーズで上昇しています。提示される価格設定は、インテルが価格を調整したにもかかわらず需要が低調なため、多くの場合は交渉可能です。
AMDも、Milanシリーズの価格引き上げをまもなく実施する計画と見られています。正確な引き上げ幅は不明ですが、顧客は、コスト削減機会がまだ利用可能とはいえ、AMD EPYC Milan CPUとIntel Cascade LakeおよびIce Lakeシリーズを今すぐ購入するよう促されています。