インフレと原材料の値上げによるCPU価格高騰
2022年10月2日から、インテルは全製品群の値上げを行う予定です。これは生産コストを引き上げている高まるインフレと原材料不足への対応です。値上げに先立ち、より安い値段に乗じることを検討される顧客は、第4四半期のプロジェクトを見直し、10月2日の施行日前に在庫を確保するのが賢明であるようです。
下の表は、製品と新たな値上げ率です。
インテル製品 (BU) | 新価格施行日 | 2022年第4四半期の値上げ率 |
Xeon CPUおよびチップセット | 2022年10月2日 | Xeon SP: ブロンズとシルバー – 5%、プラチナとゴールド 7~10% Xeon D: 2~10% Xeon E: 5% チップセット: 7% Atom: 2.5% |
クライアントCPUおよびチップセット | 2022年10月2日 | Mobile SIPPプロセッサー 0% (値上げなし) その他のコアプロセッサー 10% Pentium/Celeron/Atom 20% ワークステーションXeon W 10% クライアントおよびワークステーションPCH 10% |
NUC | 2022年10月2日 | インテルNUC (コアベース) 3~9% インテルNUC (Celeron/Pentiumベース) 2~20% |
イーサネット コントローラー チップセット市場に不透明感が深まる
ここ2か月以内に、インテルはディストリビューターの受注残(バックオーダー)を取り消し、需要予測を再確認して再提出するよう指示を出しました。その目的は重複予約と将来的な過剰供給の回避にあります。
また、インテルのチップセットの大半は台湾製であるため、中国と台湾の緊張関係が悪化すれば、供給制約が生じるおそれがあります。中国が台湾周辺での軍事演習を続けていることから、市場には配送の遅れという形で、すでに何らかの影響がある可能性があります。
台湾製のインテルMPNには次の製品があります。
需要減でメモリーモジュールが供給過多に
メモリーモジュールは、需要が依然低調で大規模事業のキャンセルが相次いでいるため、最近3~5%の値下げ発表がありました。主に暗号資産市場の暴落が原因で、使用済みモジュールがオープンマーケットに溢れているため、供給は改善しつつあります。暗号通貨の需要が回復しなければ、暗号通貨マイナーがマイニングマシンを現金化しようとするため、供給がだぶつき、価格は下がります。
メーカー各社は、依然としてそれぞれの目標値達成のため数字を追っており、コスト節約機会を追い求める顧客に的を絞って、特別価格による取引をプッシュしています。
最大30%の値下げは一時的な市場変化をほのめかす
RTX30の手持ち在庫を一掃するため、ディストリビューターはRTX 3090の価格を25~30%大幅に引き下げています。消費者市場の需要減と、暗号通貨マイニングの崩壊により中古カードが大量に出回ったことが背景にあると見られます。
次世代GPUが第4四半期には発売され、旧式モデルが打ち切りとなることから、この価格シフトや安定供給が長続きするとは考えられません。ほとんどのメーカーと異なり、Nvidiaは最終購入の事前通知を早めに行なうことをしないため、顧客は需要を予測し、価格と供給が依然有利である現在の状況を活かすことをお勧めします。
一部のMXCシリーズで買い手市場が到来しているものの、MCX-6の供給は横ばい
MXC-4とMCX-5シリーズの供給は伸びているものの、サーバープロジェクトがキャンセルされることで、市場には大量の余剰OEMが流れ込んでいます。このためコスト節約の機会を模索する個人バイヤーの市場が生まれている一方で、引く手あまたのMCX-6シリーズでは、供給が依然不安定です。この傾向は、少なくとも第4四半期までは変わらない見込みです。
Mellanoxカードは供給が改善され、新規予約注文のリードタイムが32週間から20週間程度まで短縮しています。また、市場の需要鈍化により、インテルのE810シリーズアダプターカードの価格がやや下落しています。
とはいえ、オープンマーケットの供給が限られているため、I350T2V2およびX710やXL710モデルは依然不足しています。
過剰在庫と需要低下による価格変化の誘発
消費者グレードのグラフィックカードやゲーミング用グラフィックカードの需要が低下したため、供給過剰になっています。市場が在庫消化に苦慮するなか、メーカーは既存の在庫品をなくすため正価を下げる可能性があります。この動きは、新しいシリーズ40xxのスムーズな市場導入を確実にすることにもなります。間もなくリリースが予定されているもう一つはNVIDIAのRTX 3090のハイエンドモデルで、既存モデルは新しいモデルが市場導入される段階で生産中止となるでしょう。このリリースは第3四半期に予定されており、低価格帯のバージョンがその後に続きます。
これと対照的に、AI(人工知能)およびデータセンターの顧客は、GPUに対する一貫したニーズを示しています。A100 40 GBに代わり導入された新しいA100 80 GBは、依然として高い需要を維持しています。
低容量の供給は依然逼迫し、LCDの取引は続落
低容量のSolidigm SATA SSDの供給は依然、制約されているものの、中国のサーバー市場の需要が落ち込んでいるため、市場の価格設定は10~15%程度下がる傾向にあります。供給に関する注記:
サムスンでは価格調整をめぐる議論が続いているものの、需要低迷により、ディストリビューターは10~20%の値下げを迫られることが見込まれます。
人気の11.6インチモデルなど、コンシューマ製品向けLCDの需要低迷で取引が減り、メーカーからの供給がだぶついています。このトレンドは今年いっぱい続くというのがサプライヤーの見通しです。
供給ギャップの拡大によるオペアンプが需要増へ
オペアンプの受給格差が30%を超えた結果、リードタイムが延び、特に車載グレードの製品にてこのことが顕著に見られます。需要増の要因は次のとおりです。
車載グレード部品の需要が最も高く、特にIGBTコンポーネントが顕著で、リードタイムは50週間を超えています。世界のアンプ市場の主要企業には、テキサス・インスツルメンツ、STMicro、オン・セミコンダクター、API Manufacturing、アナログ・デバイセズ、NXPがあります。
マキシム・インテグレーテッドのアンプ製品は、現在リードタイムが60週間で、MAX 40/44/96/99不足は依然逼迫しています。ハイレベル事業に集中するため、マキシムでは利益の少ない製品を減産しています。これによる生産量への影響についての情報はありませんが、需要が引き続き堅調であれば、マキシムは9月に値上げするという噂もあります。
一方、オンセミ製アンプのリードタイムはやや短く、6~52週間となっています。TSX7-XXX精密アンプは、不足が続いているため、リードタイムは範囲の上限にあります。オペアンプの供給は安定しており、生産期間はわずか6週間です。一方TSB-XXX、TSV-XXX、LMV-XXXは、現在のところ確固としたリードタイムがありません。精密アンプも、おしなべて値上がりしています。
テキサス・インスツルメンツはアンプの供給が最も安定しているようですが、顧客はリードタイムの短い代替品を探しているため、今後数か月にわたり需要増加が見込めます。
STMicroが生産調整、原材料不足で
STMicroでは、原材料の供給問題が続いているため、家電とモバイル部門の予測数値を下げています。ほかにもインフレや世界経済の減速などの要因により、消費者行動に影響が及んでいます。
原材料不足が長引く場合、生産コストが上昇することで、価格は高止まりになる可能が大きくなります。
また、MOSFETとダイオードの供給は正常化しており、リードタイムは約6か月~1年になっています。今のところ、ディストリビューターは、配給までのリードタイムへのコミットメントを大幅に変更していません。
アナログ・デバイセズの品不足が深刻化、世界的な政情不安と経済低迷で
米中間の緊張が続いているため、アナログ・デバイセズの第4四半期の見通しは楽観的とは言えません。世界的な政情不安と経済低迷により、以下のシリーズに不足が生じています。
商用グレード製品の需要はやや落ち込む一方、産業向けのパフォーマンスは堅調です。アナログ・デバイセズのほか、リニアテクノロジーとマキシムが値上げに踏み切るという噂があるものの、正式な発表はないため、これらの価格上昇がどの程度になるかは不明です。
リニアテクノロジーは、メーカーからのサポートが限られているため、ファミリーシリーズで依然苦戦しています。そのため配給までのリードタイムが不安定で、市場価格は上昇し続ける可能性があります。
明るい話題として、アナログ・デバイセズのADUMシリーズの市場供給は安定しています。正規販売代理店が徐々に割当を緩和し、市場への在庫投入量を増やしたことが一因です。
半導体メーカ各社の生産レベルは回復途上、新規施設の操業までは生産レベル足踏み
自動車生産への需要が続伸している中、コンピュータ化された車両に必要なチップの調達能力を欠くグローバルな生産工場への負担が増しています。供給不足の影響は広範囲に及んでいます。世界の乗用車生産台数は、未だパンデミック前のレベルまで回復していません。
大手チップメーカーは投資を行い、製造能力を拡張しているため、回復を助長すると見られますが、その影響は将来の生産レベルのみであって、当面のギャップを埋めるものではありません。世界的なチップ不足は2023年も続く見通しで、先行きは不透明です。
メモリー チップでは、コンシューマモバイルとPC DRAMの需要が鈍化したものの、サーバーDRAMは安定しています。需要増は、メーカー向けの出荷量が増加したためで、前四半期に比べて5~10%の増加であったことが報告されています。
製造能力に関しては、サムスンの韓国施設は今年最高値に達し、2023年第1四半期には新工場の操業を開始して、14NMファブのDRAMを増産すると発表しています。競合するSK Hynixも同様の措置を講じ、中国の無錫工場と韓国工場で増産体制に入ります。
2022年初頭に、マイクロンはウェーハ生産の管理・維持のため新しい機械類を購入する計を立て始めています。2022年末までに、1αNMがマイクロンの日本施設に導入される予定です。
DRAM消費者向けの出荷は、台湾の南亜向けが減少しています。このため、他のメモリーチップ メーカーに比較して収益にマイナスの影響が出ています。
同様にウィンボンドの収益も3.3%、やや減少しています。これはネットワーク顧客の在庫調整やテレビメーカーの供給停止によるものです。現在のところ、ウィンボンドの高雄工場は、25S NMの生産に全面的に専念する予定です。次世代20nmプロセスの量産が2023年半ばに予定されており、増収の原動力になるものと期待されています。